抄録
加工用トマトに含まれている脂質とその加工製品の品質との関係を調べる基礎的研究として, 果肉の脂肪酸組成を10品種について分析した。品種は Epoch, H-1409, H-1370, Anahu, くりこま小果, VF-36, T-613-1, のぞみ2号, Chico, Texto-2である。またpH, 屈折計示度, 色素量についても分析を行なつた。
1. pH, 屈折計示度は各品種で大きな差はないが, 色素量についてはかなり差異のあることを認めた。
2. トマト果肉に含まれる脂肪酸は, リノール酸(C18:2)が中性脂質区分(40~50%)でも, 極性脂質区分(30~40%)でももつとも多く, ついでC16:0, C18:3が多量に存在した。
3. 各品種において脂肪酸の組成比はよく似た値を示し, 大きな差異はみられなかつた。
4. 中性脂質と極性脂質の脂肪酸の組成比は異なり, 順位は変わらないがC18:2 (主ピーク) に対し, 極性脂質ではC16:0, C18:3がかなり大きな比を占めることを認めた。
5. トマト加工用品種の果肉はいずれも不飽和脂肪酸が飽和のものにくらべて1.6~2.0倍も多く含まれていた。この不飽和度はほとんどの品種で極性脂質よりも中性脂質の方が高い値を示した。