園芸学会雑誌
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39 巻, 4 号
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  • 清藤 盛正, 長井 晃四郎
    1970 年39 巻4 号 p. 291-297
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    Ca欠除培養液で水耕栽培した5年生国光の葉, 果実および枝幹部の表面を0.018M45CaCl2溶液と45Ca(OH)2溶液 (わずかに懸濁状態にある) で処理し, オートラジオグラフによつて45Caの吸収と移動を調査し, また, 一部の試料についてはGMカウンターで放射能強度を測定した。この結果は次のとおりである。
    1. 45Caは葉の表裏いずれからも吸収が認められた。新しようの頂部葉 (若い葉) は基部葉に比べて吸収後のCaの移動がよい傾向が認められた。また, 新しよう中央部の葉1枚を45Ca液に浸漬し, 34日後にその上および下の葉への移動を調べたが, いずれも45Caは検出できず, 葉から葉へCaは移動しにくいと思われた。これに反し, 果実のついている花そう葉に45Caを塗布し, 34日後にCaの分布を調査したところ, 同じ花そう内の果実に45Caが検出できた。
    2. 果実を45Caに浸漬し, 34日後にオートラジオグラフを作り, また, 74日後にとつて放射能強度を測定した。45Caの分布は果皮が最も大きく, 芯がこれに次ぎ, 果肉は最も少なく, しかも表皮から遠いほど小さい傾向があつた。芯部の45Caレベルが高い理由は, こうあ部と芯部の距離が近いことおよび浸漬ではこのくぼみに液がたまりやすいことなど主として物理的なものと思われた。
    3. 新しようおよび3年枝とも, また, 皮部および木部とも45Caの分布が認められ, 同時に, 処理部分以外へ移動することが確かめられた。45Caの分布は木部に比べて皮部が著しく高く, しかも表皮のレベルがさらに高かつた。
    4. この実験では一般にCa(OH)2に比べてCaCl2の吸収と移動が著しく大きい傾向がみられた。Ca(OH)2は溶解度以下の濃度で使用したが, 展着剤の添加によつて微量の沈澱を生じ, 実験にはこの懸濁液を使用した。したがつて, 両塩の間にみられた相違は主として水に溶けている45Caの濃度差に起因すると考えられた。
    5. bitter pit の対策の一つとしてCaの葉面散布をとりあげる場合, 吸収後のCaの移動はきわめて制限され, したがつて果実の表面によく付着するような方法を選ぶ必要がある。
    6. ボルドー液中のCa(OH)2も, その一部は樹体内に吸収され, 果実のCaレベルを高め, bitter pit の発生を軽減する可能性がある。同様にボルドー液散布によつて葉中のCaレベルにも影響があると考えられた。
  • アローラ J.S., 吉武 輝尚, 松本 和夫
    1970 年39 巻4 号 p. 298-302
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    65Znでラベルされた化合物を使つて, 温州ミカンの葉による亜鉛の吸収と転流を調べたところ, 葉による亜鉛吸収効率のきわめて高いことが明らかになつたが, 亜鉛溶液に水酸化カルシウムを添加すると, 亜鉛の吸収が明らかに抑制された。また, 亜鉛溶液にホウ酸, モリブデン酸アンモン, 塩化マンガン, 硫酸マグネシウムおよび尿素をそれぞれ500, 1,000, 1,500ppmの濃度で添加したところ, 加える化合物の種類によつて, 亜鉛の吸収を抑制する場合と促進する場合のあることが認められた。
    亜鉛をEDTAと結合させて与えると, 葉による吸収が著しく抑制されるいつぽう, 吸収後の転流はむしろキレート化合物のかたちで促進された。また, 果実を着けた枝の葉に処理すると, 果実内への65Znの転流, 集積が多く認められ, 果実が sink として作用していることが明らかになつた。
  • 温度条件と stem pitting の形成との関係
    川田 信一郎, 池田 富喜夫
    1970 年39 巻4 号 p. 303-308
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    It was found by the authors10) that if citrus trees were cultivated under the alternate high temperature (day: 25-30°C and night: 15-20°C) during winter season, the differentiation of fibrous tissue in wood was taken place even in winter season.
    Two year old Hassaku twigs (Citrus hassaku) which had stem pitting on wood were grafted on sweet lime (Citrus limeettioides) stocks. Ten months later, they were used as materials in the experiments. That is, after dividing them into two sets, one set was cultivated under the alternate high temperature (day: 25-30°C and night: 15-20°C) during winter season (from the beginning of October till the end of April) and another in natural condition of the same winter. As a consequence of the experiments, the formation of new stem pitting was not detected under the alternate high temperature (Fig. 3A1 and A2), but it appeared on wood in natural conditions (Fig. 3B1 and B2).
    This observation provided that the stem pitting phenomenon on wood of citrus tree depends on the cambial condition which has been influenced by thermoperiodicity.
  • 新居 直祐, 原田 公平, 門脇 邦泰
    1970 年39 巻4 号 p. 309-317
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 温度が早生温州ミカンの果実の肥大および品質に及ぼす影響を, コイトトロンを用いて, 果実の肥大期と成熟期の処理に分けて調査した。1967年には15°C, 20°C, 25°C, 30°Cの昼夜温を互いに組み合わせた16区とし, 1968年には15°C, 20°C, 25°C, 30°Cの昼夜恒温の4区とした。
    2. 果実の肥大期および成熟期の温度処理において横径肥大および重量生長は, 昼夜を問わず, 20~25°Cで著しくすぐれ, 昼夜の気温較差の効果はみられなかつた。ただし, 縦径肥大は高温区ほどすぐれ, 果肉歩合は25°C区で最も高かつた。
    3. 果汁中の全糖含量は, 果実の肥大期および成熟期のいずれの処理においても, 20°C前後で著しく多くなつた。ただし, 還元糖含量およびその全糖中での割合は, 高温区ほど多くなつた。
    4. 果汁中の酸含量は, 肥大期処理では25°C区で, 成熟期処理では20~25°Cで最も早く減少したが, 30°C区および15°C区では容易に減少しなかつた。
    5. 果皮のクロロフィル含量は, 肥大期および成熟期のいずれの処理においても, 低温区ほど早く減少した。とくに, 15°C区, 20°C区での含量は, 25°C区, 30°C区での含量に比べて, 格別に少なかつた。
    6. 果皮のカロチノイド含量は果実の熟期の進むにつれて増大したが, その含量は20°C区で最も多かつた。その中のキサントフィル含量はそれと平行的に増加したが, カロチン含量は逆に減少した。果肉のカロチノイド含量はほとんどキサントフィルで占められていた。
  • 高橋 和彦
    1970 年39 巻4 号 p. 318-324
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    キャベツの結球葉中の糖含量を求め, 食味の内重要な甘味との関係を求めた。
    1. 東京市場へ入荷したキヤベツ結球葉中の糖分を分析したところ季節的変動がみられた。すなわち全糖および還元糖の含量は初夏より夏になるにつれ減少し, 秋から冬にかけて増加し, 春になるとまた減少した。ただし例外があり, 冬期に低いものがあつた。非還元糖の含量は夏から秋にかけて低いが, 冬になると増加し, 春になると減少した。還元糖/全糖の比率は, 夏期には0.9以上であるが, 冬には低下し, 0.5内外にまでなり, 春に再び高くなつた。
    2. 東京大学農学部ほ場において, 1年間は種期をかえてキャベツを栽培し, 収穫したものについて糖含量を分析した結果は, 上記の実験とほとんど同様の傾向が得られた。
    3. 甘さと, 糖含量との相関は大きく, 原則的には糖含量が多ければ甘いが, 例外があり, 糖含量が少なくても甘いものや, 逆に多くても甘くないものがあつた。前者の例には, 冬期寒さに遭遇したと思われるものが, 後者の例には, 葉が硬かつたり, にがみが存在するものなどがあつた。
  • 青色光, 赤色光および近赤外光の混合光がりん茎形成に及ぼす影響
    寺分 元一
    1970 年39 巻4 号 p. 325-330
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    タマネギのりん茎形成に及ぼす青色光•赤色光および近赤外光のうち, 2種の光の混合光および白色光の影響について, 3~4葉期の貝塚早生および超極早生白を用いて実験を行なつた。
    1. 白色光源としての白熱灯と白色けい光灯の長日効果に及ぼす影響を比較すると, 白熱灯は300Luxでも肥大したが, 白色けい光灯は2000Luxでも肥大せず, 10000Luxで僅かに肥大した。
    2. 近赤外光と赤色光とを混合した場合, 赤色光が混合割合の一定限度を越えて増加すると, 赤色光は近赤外光に拮抗的に働いてりん茎形成は抑制されるが, 限度内では反対に相助的に働いて, りん茎形成は促進された。
    3. 近赤外光の増加につれて葉は黄緑化し, 肥大もこれに伴うが, 赤色光の増加によつて, 反対に葉は濃緑を増し, 肥大は抑制された。しかし赤色光が相助的な場合にはこの関係は認められなかつた。
    4. 近赤外光と青色光とを混合した場合, 近赤外光の増加, または青色光の増加によつていずれも球茎比は増加し, 青色光は近赤外光に相助的であつた。
    5. 青色光と赤色光とを混合した場合, 青色光単独では肥大は認められたが, 赤色光の付加によつて肥大は抑制され, 赤色光は青色光に拮抗的であつた。
  • 森田 敏雄
    1970 年39 巻4 号 p. 331-337
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    Nの施肥期によつて, 塊根の着生数に差を生じる原因につき, 7月中旬から8月中旬までの1か月間における地上部の生育相と根系の発達との対応関係を明らかにしようと思い, 砂質土壌と粘質土壌とを用い, 鉢 (はち)試験を実施した。
    1. 砂質土壌では, 7月中旬から8月中旬にかけて, N施肥期のおくれた区ほど地上部生育が急速に進む傾向を示したが, 粘質土壌でもその傾向に変りなかつた。
    2. すでに7月中旬の段階において, 粘質土壌は砂質土壌よりも, N施肥期がおくれるほど根の着生数そのものが少なかつたし, 大小別にみた根数でも同様であつた。しかし, 砂質土壌では塊根数ではN施肥期のおくれた区ほど劣つたが, これに次ぐ太根の数を加えた数の上では, 別にN施肥期による差異は認められなかつた。
    3. しかし砂質, 粘質土壌とも, 7月中旬から8月中旬にかけて, N施肥期のおくれた区ほどつるの伸長率が高まる傾向があつた。このため地上部で生産された同化養分が地上部の新生に向けられるため, 塊根の着生には不利な態勢に置かれることが推定された。
  • 光の強さがグロキシニヤの生長に及ぼす影響
    小山 弘道, 広井 敏男, 阿部 恒充, 渡部 弘
    1970 年39 巻4 号 p. 338-345
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    グロキシニアの生育と光の強さの関係を明らかにするために, 相対照度60%, 54%, 30%, 16%, 10%, 5%の6区を設け, 3月21日から6月17日まで実験を行なつた。
    1. 相対照度16%以下の区で弱光の影響が著るしく, 全体重, 葉重, 塊茎重は低下した。
    2. 主茎葉面積は16%区で最大となり強光区では低下した。しかし弱光区では側枝の発達が悪かつた。
    3. 葉の厚さ: L/F比は16%区以下で増大し60%区では肥厚の傾向にあつた。
    葉の形: 1/b比は16%区以下で増大した。
    葉色は弱光区が良好であつた。
    4. 花形成は強光区ほど速く, 花の大きさ, 花色は処理による差はあまりなかつた。
    5. 光合成特性: 飽和値, 10klux程度。光補償点, 0.1~0.3klux。光合成速度最大値は4~6.5mgCO2/dm2/hrで, 強光区, 弱光区でやや低下する傾向にあつた。
  • 新美 芳二
    1970 年39 巻4 号 p. 346-352
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    自家不和合性ペチュニア (Petunia hybrida) と対照植物として自家和合性ハナビシソウ (Eschscholtzia californica)を用いて試験管内受精により種子形成ができるかどうかを試みた。
    ハナビシソウの花粉は基本培地でよく発芽し花粉管伸長も十分であるが, ペチュニアの花粉はほとんど発芽しなかつた。しかし花柱 (柱頭付き) を使つた花柱培養法やたい座に着生したはい珠表面に花粉を直接散布した場合には基本培地での後者の花粉発芽, 管伸長はある程度改善された。
    試験管内受精を行なつた場合, ハナビシソウのはい珠は肥大するが発芽種子は得られなかつた。その一部は脱分化を起しカルスを形成した。ペチュニアでは自家受粉(W166H), 他家受粉 (W166H×K146BH) にかかわらず子房あたり2, 3個のはい珠が発達し, そのうちから健全な実生が得られた。
  • 窒素供給時期が砂耕したダッチ•アイリスの 球根収量と3要素の吸収におよぼす影響
    山根 幹世
    1970 年39 巻4 号 p. 353-362
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ダッチ•アイリスの品種‘Wedgwood’の球根生産に及ぼす窒素の時期的な影響を見るため, 5.5±0.2gの木子を砂耕し, 4つに分けた時期 (Fig. 1) に窒素を与えたり与えなかったりしてそれぞれの時期の影響を考察した。
    1. 葉重は, 3月末の測定値が最大であったが, stageIIIに窒素を欠除した区 (C, J) は生体重•乾物重•乾物率共に最大であり, 逆にこの時期に窒素を供給した区の値は小さかった。
    2. 葉中窒素濃度は, 3月末に一番高かったが, これは1月まで (stage I, II) の窒素供給の有無にかかわりなく, 2~3月 (stage III) に窒素を与えた区は高く (3%) 欠除した区は低く (2%) なった。
    3. 根の窒素濃度は, 1月末に一番高かったが, これを充分高めるには1月まで (stage I, II) の窒素の供給を必要とした。また1月まで (stage I, II) 窒素が供給されなかった場合には2月以後に窒素濃度の高まりが見られた。
    4. 母球の窒素濃度は, 生育初期 (stage I, II) の無窒素によって大きく減少した。その窒素濃度と母球重量(乾物) との間には1月末においてr=-0.979の相関があり, 吸収した窒素が母球中の貯蔵養分の消費に密接な関係のあることが見られた。
    5. 各時期の窒素吸収量 (Table 12) は, stage IIが小さく, stage IVはとくに大きかった。窒素の吸収と加里の吸収は相助的であった (Table 11)。
    6. 葉•根•母球中の窒素濃度相互の関係は, 生育期により大きく変動した (Table 4)。根と葉の相関係数が, 1月末にとくに小さくなった。これは stage IIにおける窒素吸収量が少ないことから (Table 12), はじめ地上部にあった窒素が stage IIになって根に移行したものと推察される。
    7. 生産球根にとって各時期の窒素供給は (Table 5,6)。
    Stage I: 収量に殆んど影響がないか, むしろ減収の傾向があった。
    Stage II: 高収量を得るのに最も重要であり, 中心球•木子共に有効に収量を高めた。
    Stage III: 中心球の収量は減ずるが, 木子の収量を高める傾向があった。しかし, 後で窒素が供給されるならば, この時期に窒素を中断したもの (J区) が最高の収量となった。
    Stage IV: 中心球の収量は滅少するが, 木子の収量を高める傾向があった。しかし, この時期の窒素の吸収は含水率を大きく高めた。
    8. 生産された球根の含水率は, その窒素含有率と非常に深い関係にあっった (Fig. 5)。
    9. 葉中窒素濃度と球根乾物収量との関係は, stage III以後に深くなった (Table 8)。
    10. 球根の生産にとって有効な窒素の供給方法は, stage IIとIIIに供給して stage IとIVに除する方法と, stage IとIIおよび stage IVの内5月中旬まで供給して, stage IIIおよび stage IVの内5月中旬以後に欠除する方法が考えられる (Table 13)。
  • 不定根形成に対する光及び培養基の影響について
    上田 博, 鳥潟 博高
    1970 年39 巻4 号 p. 363-368
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    Cymbidium goeringii シュンランの shoot (カイネチン添加培地, 8週暗培養) を基本培地+10mg/lカイネチン+10-3M L-アルギニン培地に移し, 8週間暗培養した場合, shoot の生長もよく, 大部分に root が形成される。基本培地+10mg/lカイネチン培地では root の形成は起らない。Shoot を各種の光 (白色光, ビタルックス光, 青色光, 赤色光) の下に移して培養した場合, intensity の高い白色光並びにビタルックス光 (8,200並びに7,300 ergs cm-2sec-1) においてのみ root 形成が見られた。intensity の低い白色光, ビタルックス光, 青色光, 赤色光 (4,400, 4,000, 4,100, 4,200 ergs cm-2 sec-1) では root は形成されなかつた。一方C. insigneの shoot (基本培地, 8週暗培養) を同様に各種の光の下に移して培養した場合, 各区とも4,000 ergs cm-2sec-1以上のものでのみ root 形成が見られた。赤色光の場合は青色光に比し, クロロフイルの形成, root の生長がやや劣つた。不定根形成に対する光の影響は波長よりも intensity に左右されると見られ (不定根形成に要する intensity は種によりやや異なる), 光合成, 窒素同化に主として関係するものと考えられる。
  • 青葉 高
    1970 年39 巻4 号 p. 369-374
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    初夏に球根を形成する8種の球根花きの実生苗を用い, 苗の低温処理が球形成に及ぼす影響について実験を行なつた。その結果は次ぎのようである。
    1.Allium atropurpureum, A. neapolitanum は202.°C, 長日条件では140日間生育後も球を形成しなかつた。しかし4~5葉時に5°Cで30日間または10°Cで50日間処理した苗は20°Cの条件下で正常な球を形成した。
    2. フリージアと A. pulchellum は球形成のための低温要求度が前の2種より低かった。5°Cに73日間おいたフリージアの催芽種子は18~20°Cで培養した場合, 本葉5~6葉の若苗で正常な球を形成した。
    これに対し A. porrum は球形成のための低温要求度が高く, 低温感応に必要な苗令も他の供試花きより大きいことが知られた。
    3. A. flavum, A. heldreichii およびバビアナは20°Cでは球を形成せず, 低温処理により球形成が促進された。
    4. 以上の点からみて, 初夏に球を形成する球根花きは, ある程度の低温期経過によつて球根形成がおこるものと思われる。
    そして初夏に球を形成する球根植物における球形成は, 花成の場合の春化作用と同様, 季節的温度周期性(seasonal thermoperiodicity) によつて生起するものと考えられる。
  • 新CA貯蔵方式の中規模装置の試作
    本多 靖, 石黒 修, 沼口 寛次
    1970 年39 巻4 号 p. 375-379
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 開発した研究室用CA装置をスケールアツプして実用CA貯蔵装置 (10.5m3規模) を設計, 組立て, 運転したところ, 貯蔵庫の気密とガス交換塔の出入水, 曝(ばく) 気装置の出入水の溶存酸素, 炭酸ガス含量は設計計算値通りの値を示した。
    2. この装置を用いてリンゴのCA貯蔵実験を実施した結果, 設定CA条件を水量を調節する手法で安定的に維持でき, リンゴの品質保持も良い結果を示した。
  • 温熱処理による減酸
    北川 博敏, 足立 修三, 樽谷 隆之
    1970 年39 巻4 号 p. 380-384
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 30~40°Cの温度に果実を数日間おく, いわゆる温熱処理によりナツダイダイは減酸した。その効果は温度が高いほど, また, 期間が長いほど大であつたが, 苦味の増大, 異臭の発生も強くなつた。
    2. 果実に悪影響の生じない35°C, 3日間の温熱処理により酸含量の比較的高い果実はかなり大きく減酸したが, 酸含量のあまり高くない果実においてはそれほどではなかつた。
    3. 温熱処理中には果実の呼吸が一時的に増大した。
    4. 温熱処理により減少する酸はクエン酸およびリンゴ酸であつたが, 量的に多いクエン酸の減少が顕著であつた。
  • 加工用トマト果実の脂肪酸組成について
    上田 悦範, 南出 隆久, 緒方 邦安, 増田 寛行
    1970 年39 巻4 号 p. 385-389
    発行日: 1970年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    加工用トマトに含まれている脂質とその加工製品の品質との関係を調べる基礎的研究として, 果肉の脂肪酸組成を10品種について分析した。品種は Epoch, H-1409, H-1370, Anahu, くりこま小果, VF-36, T-613-1, のぞみ2号, Chico, Texto-2である。またpH, 屈折計示度, 色素量についても分析を行なつた。
    1. pH, 屈折計示度は各品種で大きな差はないが, 色素量についてはかなり差異のあることを認めた。
    2. トマト果肉に含まれる脂肪酸は, リノール酸(C18:2)が中性脂質区分(40~50%)でも, 極性脂質区分(30~40%)でももつとも多く, ついでC16:0, C18:3が多量に存在した。
    3. 各品種において脂肪酸の組成比はよく似た値を示し, 大きな差異はみられなかつた。
    4. 中性脂質と極性脂質の脂肪酸の組成比は異なり, 順位は変わらないがC18:2 (主ピーク) に対し, 極性脂質ではC16:0, C18:3がかなり大きな比を占めることを認めた。
    5. トマト加工用品種の果肉はいずれも不飽和脂肪酸が飽和のものにくらべて1.6~2.0倍も多く含まれていた。この不飽和度はほとんどの品種で極性脂質よりも中性脂質の方が高い値を示した。
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