ダッチ•アイリスの品種‘Wedgwood’の球根生産に及ぼす窒素の時期的な影響を見るため, 5.5±0.2gの木子を砂耕し, 4つに分けた時期 (Fig. 1) に窒素を与えたり与えなかったりしてそれぞれの時期の影響を考察した。
1. 葉重は, 3月末の測定値が最大であったが, stageIIIに窒素を欠除した区 (C, J) は生体重•乾物重•乾物率共に最大であり, 逆にこの時期に窒素を供給した区の値は小さかった。
2. 葉中窒素濃度は, 3月末に一番高かったが, これは1月まで (stage I, II) の窒素供給の有無にかかわりなく, 2~3月 (stage III) に窒素を与えた区は高く (3%) 欠除した区は低く (2%) なった。
3. 根の窒素濃度は, 1月末に一番高かったが, これを充分高めるには1月まで (stage I, II) の窒素の供給を必要とした。また1月まで (stage I, II) 窒素が供給されなかった場合には2月以後に窒素濃度の高まりが見られた。
4. 母球の窒素濃度は, 生育初期 (stage I, II) の無窒素によって大きく減少した。その窒素濃度と母球重量(乾物) との間には1月末においてr=-0.979の相関があり, 吸収した窒素が母球中の貯蔵養分の消費に密接な関係のあることが見られた。
5. 各時期の窒素吸収量 (Table 12) は, stage IIが小さく, stage IVはとくに大きかった。窒素の吸収と加里の吸収は相助的であった (Table 11)。
6. 葉•根•母球中の窒素濃度相互の関係は, 生育期により大きく変動した (Table 4)。根と葉の相関係数が, 1月末にとくに小さくなった。これは stage IIにおける窒素吸収量が少ないことから (Table 12), はじめ地上部にあった窒素が stage IIになって根に移行したものと推察される。
7. 生産球根にとって各時期の窒素供給は (Table 5,6)。
Stage I: 収量に殆んど影響がないか, むしろ減収の傾向があった。
Stage II: 高収量を得るのに最も重要であり, 中心球•木子共に有効に収量を高めた。
Stage III: 中心球の収量は減ずるが, 木子の収量を高める傾向があった。しかし, 後で窒素が供給されるならば, この時期に窒素を中断したもの (J区) が最高の収量となった。
Stage IV: 中心球の収量は滅少するが, 木子の収量を高める傾向があった。しかし, この時期の窒素の吸収は含水率を大きく高めた。
8. 生産された球根の含水率は, その窒素含有率と非常に深い関係にあっった (Fig. 5)。
9. 葉中窒素濃度と球根乾物収量との関係は, stage III以後に深くなった (Table 8)。
10. 球根の生産にとって有効な窒素の供給方法は, stage IIとIIIに供給して stage IとIVに除する方法と, stage IとIIおよび stage IVの内5月中旬まで供給して, stage IIIおよび stage IVの内5月中旬以後に欠除する方法が考えられる (Table 13)。
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