園芸学会雑誌
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トマトの生育ならびに開花•結実に関する研究(第13報)
花の発育ならびに形態に及ぼす光の強さと床土の肥沃度の影響
斎藤 隆伊東 秀夫
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1972 年 41 巻 2 号 p. 179-184

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抄録
トマトの花芽は幼苗期の低温によつて発育を増大し, がく片数や子室数の増加をもたらすが, 幼苗期の光の強さや床土の肥沃度を変えた場合に花の形態, とくに子房の発育と子室数がどのように変化するかについて調査した.
1. 自然光を寒冷しやでしや光して75%, 50%および25%日照に調節した下で苗を育成した場合, 自然日照下において花の発育が促進され, がく片, 花弁, やく, 子房の各器官の分化•発育が増大し, 子房が大きく, 子室数が多く, 光度の低下に伴つて花芽の各器官の分化•発育は抑えられ, 各器官とも順次分化数が少なく, 発育が悪くなつている.
2. 肥沃度の異なる床土で苗を育成した場合, 窒素, リン酸, カリの含量の多い肥沃な床土区ほど花の発育が促進され, 各器官の分化•発育が増大し, 子房が大きく, 子室数が多くなつている. せき土区では花芽の各器官の分化•発育は抑えられ, 子房が小さく, 子室数が少なくなつている.
3. 光度の低下に伴つて同化作用が抑えられ, 苗の炭水化物の含量が少ないような場合, あるいは, 床土の肥沃度が劣り, 苗の窒素, リン酸などの含量が少ないような場合にも, 苗の栄養状態が不良となり, 分化•発育中の花芽への養分供給が不良となつて各器官の分化•発育が抑えられ, 子房は小さく, 子室数が少なくなるものと考えられる.
4. 花の各器官の相互関係をみると, 一般に花梗が太く, がく片数の多い大きな花では, 子房が大きく, 花柱径が大きく, 子室数が多くなつている. がく片数と子室数はともに同様に変移しているが, がく片数増減に対して子室数増減はより大きく変移している.
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