園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
カンキツ類果実の生理および貯蔵に関する研究 (第3報)
果実の予措乾燥に及ぼす風速の影響
邨田 卓夫
著者情報
ジャーナル フリー

1972 年 41 巻 3 号 p. 312-316

詳細
抄録
温州ミカンの予措乾燥技術について検討する目的で, 片山系温州ミカン (Citrus unshiu MARCOVITCH. cv. KATAYAMA) と石川系温州ミカン果実 (cv. ISHIKAWA) の予措乾燥に及ぼす風速の影響を調べた. また貯蔵果実 (7.5±3.5°C, 90±2.5%RH) の品質について官能検査で調べた.
1. 片山系温州ミカンを収穫後10±1.5°C, 62±2%-20±2.5cm/sec., 60±7.5cm/sec., 180±125cm/sec. の風速で予措乾燥した. 果実の重量減少率はこの風速の範囲内では風速の差の影響はみられず, 予措乾燥中ほぼ直線的に重量が減少した.
2. 収穫時期を異にした石山系温州ミカンの予措乾燥に及ぼす風速の影響を, 12月1日収穫の果実と12月16日収穫の果実について比較した. 収穫時期に無関係に風速25~110cm/sec. の範囲内では, 片山系温州ミカンの場合と同様にほぼ直線的に経過日数に従つて果実重量が減少した.
3. 果梗部を中心に直径3cmの円形の部分を残し, 他を0.05mmのポリエチレンフィルムで2重に包んだ石川系温州ミカンを25~110cm/sec. の風速下で予措乾燥した. 8日間の目減りが, 0.7%で無包装のものの約1/7であつたことから, 温州ミカンの水分蒸散では, 果梗部がとくに重要な役割を演ずるものではないと判断した.
4. 片山系温州ミカン, 石川系温州ミカンとも無風状態下 (風速5cm/sec. 以下) では明らかに目減りが押えられ, 5日間の目減りは前者 (10±1.5°C, 90±2.5%RH)が1.18%で, 風速20±2.5cm/sec. の場合の約1/3, 後者 (11±1.5°C, 85±5%RH) は1.75%で風速25±5cm/sec. の場合の約1/2であつた.
5. 片山系温州ミカンを湿度90±2.5%, 温度7.5±3.5°Cのプラスチックコンテナ内で貯蔵し, 貯蔵中の品質を官能検査によつて比較したところ, 外観については, 無予措のもののほうがむしろ予措乾燥した果実より高い評点を得た. 味覚についてはパネルメンバーのし好の相違もあり両区に有意差が認められなかつた.
以上の結果から, 温州ミカンの予措乾燥は, 温度10°C, 湿度60%前後では風速20cm/sec. 以下の微風で充分で, 送風は果実表面の水蒸気の拡散を促すことが目的で, 風速はこのための最小の速度でよく, 高速度の送風は効果が増大しないだけでなく, 高湿下の貯蔵では果実の品質に悪影響を与えるものと推論した.
著者関連情報
© 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top