園芸学会雑誌
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カキにおけるNAAの摘果機構について(第1報)
NAA処理による落果と果実内の内生生長調整物質との関係
山村 宏内藤 隆次
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1975 年 43 巻 4 号 p. 406-414

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抄録
カキにおけるNAAの選択的落果誘発機構を明らかにするため, 富有を用いてNAA処理後の果実内の内生生長調整物質の変化と落果との関係を, 処理時の果径との関係において調査した.
(1) 1970~1972年の満開後約20日にNAA 50ppmを散布したところ, 3年とも落果は処理後3~4日でピークに達し, 約7日でほぼ終つた. 落果は果径にほぼ逆比例し, 大果は落果しにくく, 種子数の少ない小果は落果しやすかつた.
(2) 処理前のGA様活性は果実(果肉十種子), ヘタともに大果で高く, 小果で低かつた. NAA処理によつて果実内のGA様物質レベルは大果および小果ともに3日以内に低下したが, 大果ではなお処理前の小果のレベルより高かつた.
処理前の大果と小果において, ペーパークロマトグラム上にみられるオーキシン様活性部位のRf値がそれぞれ異なり, 小果におけるオーキシン様活性はNAA処理後3日以内にみられなくなつた.
(3) 果実, ヘタとも小果のABA様抑制物質は大果より多く, 大果果実はNAA処理後1日目と3日目でともにほとんど変化がなかつたのに対し, 小果果実では処理後1日目から著しく増加した. ヘタでは処理後のABA様物質の増加が果実より顕著であつた.
(4) NAA処理後のGA3あるいはGA7の追処理がNAAの摘果効果を打ち消したことから, 果実内のGAレベルが落果と密接な関係にあることが裏づけられた.
以上のように, 内的条件の異なる果実が同一樹に混在することが, NAAによる落果誘起が選択的に行なわれる一要因と考えられた.
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