抄録
タマネギ苗の花芽形成に対して有効な温度の段階と継続期間を明らかにするとともに, 低温感応に対する日長および光の強さの影響についても実験を行なつた.
1. 泉州黄, 今井早生および札幌黄の3品種を供試し, 温度を0, 5, 9, 13°Cの恒温および昼温17°C夜温12°C変温の5段階とし, 種々の期間処理した結果, 花芽形成に要する低温処理期間は, 3品種ともに, 9°C区で最も短く, 20~30日間で十分であつた. また, 9°Cより低温でも高温でも感応性は低下し, 花芽形成に要する低温処理期間は増加し, 17°C以上および0°C以下の温度では花芽形成は起こりにくいものとみられた.
タマネギ苗の花芽形成に対する有効温度範囲は, 最低2~3°Cから最高15~16°Cの範囲とみられ, 9°C前後を最適温度とし, それより低温でも, 高温でも感応性は低下し, いわゆる最適曲線を示すことが認められた.
2. 低温処理前に8時間と24時間の日長処理を行なつた場合, 24時間日長区では, 長日処理により球の形成の方向にすすみ, 低温感応性は著しく低下した.
3. 低温処理と同時に8, 12, 16および24時間の日長処理を行なつた場合, 24時間日長区では低温感応性が高まり8時間日長区に比べて短い処理期間で花芽が形成されたが, 16時間以下の日長区においては低温感応性に大きな差異はみられなかつた.
4. 低温処理と同時に寒冷しゃでしゃ光して自然光の約25%日照とした場合, 葉しょう径10~11mmの大苗では, 日照の強さによって低温感応性はほとんど影響をうけなかつたが, 葉しょう径7mm前後の苗では, しゃ光処理によって低温感応性が著しく低下した.