園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
秋季の土壌水分含量が温州ミカンの果実の発育と果汁の成分におよぼす影響
菅井 晴雄鳥潟 博高
著者情報
ジャーナル フリー

1976 年 44 巻 4 号 p. 330-337

詳細
抄録

温州ミカンの幼木を用いて, 1969年9月には多湿•中湿•少湿の3区, 1970年9月には, 中湿•10日間少湿•20日間少湿•30日間少湿の4区の土壌水分処理を行ない, 果実の発育と果汁成分にどのような影響を与えるかを調査した.
1. 葉の全糖•還元糖含量は土壌を少湿状態にすることにより高まった.
2. 果肉の肥大は少湿期間が長いほど劣った. 果肉中の可溶性固形物の濃度は少湿期間が長くなるほど高くなる傾向があり, 酸の濃度も30日間少湿区が最高となり, 食味も少湿期間が長くなるほど濃厚となった.
3. 果肉中の糖は, 濃度では少湿条件で高かったが, 一果当りの含量ではほとんど差がなく, また酸も濃度では30日間少湿区が中湿区より有意に高かったが, 一果当りの含量では差がなかった. このことから, 少湿区の果実の食味が濃厚となるのは果肉中の糖•酸が水により希釈されないことによるものと思われた.
4. 中湿区と少湿区の一果当りの糖含量にはほとんど差はなかったが, 糖の構成比に違いがみられた. すなわち, 少湿区果では還元糖の割合が高くなり, それも少湿期間が長くなるほど高くなった. これらのことから, またこの時期は酸含量が最高となり, 糖含量が急増しはじめる時にあたり, この時期をさかいにして果肉内の代謝の様相に変化がおこるものと考えられることなどから, この時期に土壌水分を少湿にすることにより, 代謝の方向が変えられてしまうものと推察された.

著者関連情報
© 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top