園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
日向夏ミカン果実の発育後期における砂じよう乾燥症に関する研究
中島 芳和
著者情報
ジャーナル フリー

1976 年 44 巻 4 号 p. 338-346

詳細
抄録

日向夏ミカン果実の発育後期に発生する砂じょう乾燥症について組織学的および生理学的調査を行ない, その発生機構について検討した.
1. 砂じょう乾燥症は, 初めにじょうのうの中で果実の中軸に近い部分に発生した. その後じょうのう側膜に沿って果皮の方向に進行し, やがてじょうのう全体に広がった. 乾燥症砂じょうの表皮組織は比較的透水性が高く, その表皮細胞はよじれて脱水状態を示した.
2. 砂じょう外に流出した果汁の行動を調べるために, 樹上の成熟果を用い, そのじょうのう中央部に色素液を注入したところ, 健全果の色素液は種子が付着している部分に移行し, さらに種子維管束を通って中軸維管束に移った. 一方, 砂じょう乾燥症の激しい果実では色素液は中軸維管束に移行することなく, じょうのう内にとどまった.
3. 砂じょうの呼吸およびエチレンは5月上旬までごくわずかであったが, 5月中旬から6月中旬にかけて急激に増加した. また乾燥症の発生初期には急激に多くなったが, 症状の程度が激しくなると逆に減少した. 果皮の呼吸強度は健全果に比べて乾燥症果で高かった. さらに成熟果の砂じょうのエチレン発生量はじょうのう側膜部が中央部よりも多く, またじょうのうから発生するエチレンは, 側膜と側膜の接合部を切開することによって著しく多くなった.
4. 乾燥症の発生にともなって果実比重, 果汁の可溶性固形物, 全糖およびクエン酸含量が低くなったが, 特にクエン酸含量が1%前後に下ると乾燥症が発生しやすくなった.

著者関連情報
© 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top