1976 年 45 巻 1 号 p. 24-32
線虫汚染ほ場でたい肥を施用することが作物の生育促進に有効であることが古くから知られているが, 野菜苗に対するたい肥施用の効果はつねに認められるとは限らないようである. 本報では, サツマイモネコブセンチュウの生息土壌にたい肥を単独施用し, じかまきした野菜苗の線虫被害に対する影響と, それに関与する諸要因について調査した.
1. エダマメ (北海1号) およびインゲンマメ (トップクロップ) を2月下旬に, 地温28°Cの温床内で線虫生息土壌にたい肥を施用しては種した. エダマメでは線虫被害は認められず, たい肥施用による生育促進も認められなかつた. インゲンマメでは線虫被害がきわめて大きい反面, たい肥施用による生育促進がみられたが, 草たけについての生育促進は認められなかつた.
2. 夏季には種した野菜では, たい肥施用による生育促進は線虫密度および野菜の種類によつて異なつた, キュウリの幼苗では線虫密度•土壌50g当たり55頭程度のときたい肥施用による生育促進は認められたが, 土壌50g当たり100頭程度ではあまり認められなかつた. クロダネカボチャの苗では線虫密度•土壌50gあたり100頭程度のときたい肥施用による生育促進は認められたが, 土壌50gあたり300頭程度ではあまり認められなかつた.
3. キュウリおよびハクサイを線虫生息土壌に水洗いたい肥を施用しては種した. キュウリの幼苗では根の生育が良好であつたが, 線虫寄生も多かつた. ハクサイの苗では生育は全く助長されなかつたが, 線虫寄生は多かつた.
4. レタスを10月上旬に, 線虫生息土壌にたい肥を施用しては種した. この時期のレタスの苗は線虫寄生を受けても被害は全く認められず, たい肥施用による生育促進が顕著に認められた.