園芸学会雑誌
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そ菜のカルシウム吸収に関する研究 (第1報)
そ菜の異なつた生長相におけるカルシウム吸収とその生理的意義
陳 文孝上本 俊平
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1976 年 45 巻 1 号 p. 33-42

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抄録

熱帯に起源を持ち, 栄養ならびに生殖の2相を同時に重複させて生育するトマト, ナスなどの果菜類, および温帯に起源を持ち, 栄養生長相から生殖生長相への1生長周期を持つのが通常であるハクサイ, レタスなどの葉菜類を供試して, 結実または抽だい開花の有無とカルシウムの吸収特性を調査し, とくに開花結実に伴うカルシウムの化学形態の変化や, 酸や無機成分の消長について検討を加えた.
1. 果菜類 (トマト, ナス) では, 結実に伴つて葉身中のカルシウム含有率は増加し, 果実を収穫すると停滞して摘花区のそれに近づいて周期的な変動を示した. また, トマトでは果実肥大期に葉身中のカルシウム含有率ならびに全吸収量と着生果房数との間に有意な正の相関関係が認められた. 葉菜類 (ハクサイ, レタス) では葉身中のカルシウム含有率は結球に入ると低下し, 抽だい開花に伴つて上昇傾向に転じ, 1周期の変動のみが認められた.
2. 開花または結実に伴うカルシウム吸収の促進は, 葉身中の水溶性カルシウム (イオン状無機化合物の一部, シュウ酸カルシウムを除く有機酸カルシウム塩) および塩酸可溶態カルシウム (シュウ酸カルシウム塩) の増加と関連し, その傾向はトマトで果房直近の葉で著しかつた. また, それに平行して葉身中にシュウ酸, クエン酸など有機酸の増加が認められた.
3. トマトでは結実に伴つて葉身中のリンの含有率も増加したが, カリとマグネシウムは低下した. しかし, ハクサイでは結球区と開花区との間にカルシウムを除き, 他の無機成分の含有率の差異は明らかでなかつた.
4. トマトもハクサイも, 生育相に関係なく, 葉身中のカチオン総量とアニオン総量とはつねに平衡関係が認められた.

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