1976 年 45 巻 1 号 p. 43-49
培養液の塩類濃度がそ菜の微量要素栄養におよぼす影響を調べるため, トマトとキュウリを供試して実験を行なつた. 処理液は Hoagland と Snyder の処方に準じた培養液の多量要素のみを1~5倍まで5段階に濃度を高め, 微量要素濃度は一定に保つた. 各処理液のpHは作製時に6.0に調節したが, 作物の生育期間中の変動はそのままとした. 栽培期間は両作物とも15日間であつた.
1. 培養液濃度の高い培地で生育したトマトとキュウリは生育が遅れた. 2~3倍液の濃度ではトマトの方がキュウリよりも影響を強くうけた.
2. 培養液濃度の高まりにより植物体各部位のMn含量が著しく低下した. この傾向はトマトよりキュウリの方がやや顕著であつた.
3. 葉身中のB含量も影響をうけ, 培養液濃度の高まりにより含量が低下した. この傾向はトマトで著しかつた.
4. 葉身中のFe含量は培養液濃度の増大によりわずかに増加する傾向があつた. Zn含量には処理の影響が小さく, Cu含量は作物により影響のうけ方が同じでなかつた.
5. 葉身中のS含量は培養液濃度の高まりに伴ない増加した. この傾向はトマトの下位葉において顕著であつた.