園芸学会雑誌
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そ菜の重金属過剰障害に関する研究 (第5報)
水耕培養液中の鉄濃度がそ菜のマンガン過剰障害に及ぼす影響
大沢 孝也池田 英男
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1976 年 45 巻 1 号 p. 50-58

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抄録

培養液中のFe濃度がそ菜のMn過剰障害に及ぼす影響について検討するため, 9種類のそ菜を供試して水耕試験を行なつた. 基本培養液には Hoagland 第1液を用い, 処理はMn0.5, 10, 30, 100ppmと, Fe 1, 3, 10,30ppmの組み合わせ (Fe/Mn比は0.01~60にわたる)とした. 培養液のpHは約6に調節した.
1. Mn誘導クロロシスは, 上位葉から発生するFe欠乏症状類似の葉脈間クロロシスと, 下位葉から発生し, しばしばかつぱんを伴う葉縁クロロシスとに大別できた. 前者はホウレンソウ, トマト, トウガラシ, インゲンマメに, 後者はレタス, セルリー, キャベツにみられた. ナス, ネギはクロロシスを発生しなかつた.
2. 一般にFe増施は葉脈間クロロシスの発生を軽減あるいは防止する効果があつた. しかし葉縁クロロシスに対しては, レタスの場合を除いて, そのような効果はほとんど認められなかつた.
葉の分析結果から, 葉脈間クロロシスはFe欠乏症状と考えられた. 一方, 葉縁クロロシスはMnの過剰集積に起因するように思われた.
4. Fe増施がMn過剰による生育阻害を改善する効果は, そ菜の種類によつて著しく異なつた. すなわちホウレンソウでは顕著な効果が, またトマト, インゲンマメ, トウガラシ, レタス, ナスではある程度の効果が認められた. しかしセルリー, キャベツ, ネギではほとんど効果がなかつた. なおトウガラシ, レタス, ナスではFe 30ppm区は生育阻害をきたした. Fe増施によるMn過剰害軽減効果に関与する要因としては, Mn誘導クロロシスの軽減あるいは防止, 植物体中のMn過剰集積の抑制, Fe過剰に対するそ菜の耐性が考えられた.
5. ホウレンソウでは培養液中のFe/Mn比は正常な生育と密接な関係があり, 同比の低下は生育減退とMn誘導クロロシスの発生をもたらした. しかしトマト, トウガラシ, インゲンマメ, レタス, ナスでは培養液中のFe/Mn比とMn濃度の両方が生育あるいはMn誘導クロロシスの発生に関与し, またセルリー, キャベツ, ネギではMnの絶対濃度が支配的要因であつた.
6. 葉中のFe/Mn比と各種そ菜の生育との間には, Fe 30ppm区を除外すれば, かなり密接な関係が認められ, 同比の低下は生育減退に結びついた. Fe過剰による生育阻害は同比の過大によつては説明できなかつた.

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