園芸学会雑誌
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キクの花色に関する研究 (第3報)
花色に対する主要色素の量的効果と花色の測色
河瀬 晃四郎塚本 洋太郎
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1976 年 45 巻 1 号 p. 65-75

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抄録

(1) 花色に対する主要色素の量的効果をみるため, カロチノイド色素およびアントシアニン色素の抽出, 定性, 定量実験を行ない, 生花弁のスペクトル•カーブから得られた吸光度と比較検討した. また, 花色を客観的に表示するために, 測色色差計で花弁色の測色を行なつた.
本実験では, 供試した68品種を概略的に (1) 白色花, (2) 桃色花, (3) 黄色花および (4) (i) 橙色花, (ii) 赤色花の4グループに分け, それらのグループでの花色の特性を検討した.
(2) アントシアニン色素およびカロチノイド色素のTLCを用いた定性的な分析結果から, 前者では供試した68品種中, アントシアニン色素を含有すると思われる品種49種の総てに主要なアントシニン色素として3個のスポットが認められた. 後者のカロチノイド色素では10個のスポットが主要なものとして認められ, 68品種中, カロチノイド色素の定性に供した26品種の総てに同じ色素スポットを観察した.
(3) 黄色花, 橙色花および赤色花の各グループの花色の発現に関与しているカロチノイド色素は, 黄色花グループよりも橙色花および赤色花グループに含量の高い品種が多かつた.
他方, 桃色花, 橙色花および赤色花の各グループの花色発現に関与しているアントシアニン色素では, 桃色花グルーブ (特に赤紫色花) および赤色花グループの品種に比較的高濃度含有の花が出現していた.
(4) カロチノイド色素は, 低濃度の含有で十分な黄色の花色発現を行なうことができるのに反し, アントシアニン色素の場合はかなり高濃度の含有で赤色系の花色発現が行なわれていた.
(5) UCS表色系による花色の数値的表現は非常に近接した色調を判別するのに有効であり, その結果から, 前報で区分した4グループの分類もよく説明できた. しかし, 明度の低い濃赤色と濃赤紫色との色調の差は肉眼では明らかに認められたが, UCS表色系ではかなり近接した色調として表現された.
(6) UCS表色系で表わされた花色の明度 (L) はカロチノイド色素含有濃度の影響を受けていないが, アントシアニン色素によつては影響を受けていて, 桃色花, 橙色花および赤色花の各グループではその含量の増加によつて明度は低下した.
(7) カロチノイド色素含量およびアントシアニン色素含量と, a, b, および√<a2+b2> (彩度) との間には, グループ別にそれぞれ相関関係が認められた. アントシアニン色素は色相の変化に寄与していたが, 桃色花グループでは彩度の変化に寄与していた. 一方, カロチノイド色素は彩度の変化に寄与するところが大きかつた.

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