園芸学会雑誌
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カキ果のタンニン (第2報)
脱渋と揮発性物質
楠本 正次吉村 不二男
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1976 年 45 巻 1 号 p. 76-80

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抄録

1. 1969年, 1971年に渋ガキ (平核無, 横野, 愛宕, 川端) を室内で放置して熟しとした過熟処理, 40°Cで湯抜きした温水浸漬処理, 皮を除いて室内で風乾して干しガキとした乾燥処理および-30°Cで60日間貯蔵した凍結処理をそれぞれ行ない, 処理中のカキ果を適宜取り出して, 滴定法, ガスクロマト法で水溶性タンニンおよび揮発性物質の消長と食味との変化を相対的に比較検討してみた.
2. 凍結法を除いて, いずれの処理においても, 果実の軟化に伴つて, 水溶性タンニンが急速に減つて, まずアルコールが, 続いてアセトアルデヒドが増した. これら揮発性物質が最も多くなつた前後において, 食味のうえで渋くなくなつたが, 水溶性タンニンは必ずしも最低量とはなつていなかつた. 揮発性物質の発生量ではアルコールが多く, なかでもメタノールが初期にやや多かつた. 試みに濃いアルコールを果汁および果肉の切片に滴下してみても変化がなかつた. 脱渋に関連のある, タンニン細胞内容物のコロイド化, 凝固, 収縮には, 発生量で少ないアセトアルデヒドが直接関与しているのであろう.
3. 凍結処理前後で, 揮発性物質に著しい変化がなかつたが, タンニン細胞の内容物は凝固してゼラチン状となつていた.

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