園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
凍結乾燥ニンジンの貯蔵性について (第3報)
L-システィン塩酸塩の添加とカロチン減少率について
田尻 尚士松本 熊市原 和子
著者情報
ジャーナル フリー

1976 年 45 巻 1 号 p. 81-88

詳細
抄録

[1] 生試料•L-cys′-hyd′無添加区: 貯蔵限界が0°C区で30日, 5°C区20日, 10°C区15日間となつた. 検体水分含有量がきわめて高いために貯蔵中に微生物などがかなり活発に生理作用を営み, 貯蔵温度が5°C以上ではとくにこの傾向が強く, 60日以上の貯蔵では0°Cでも異臭, ネトの発生が見られ, 退色現象が併発するとともに黒変, 液汁を発し腐敗へと進行した.
[2] 生試料•L-cys′-hyd′添加区: 検体中の水分含有量が高く, 微生物の付着などにより, L-cys′-hyd′の添加効果が弱く貯蔵初期にのみその効果が若干期待出来るが, 貯蔵日数60~80日間が限界となつた. L-cys-hyd′20%添加区ではかなり顕著にその効果が認められたが, 貯蔵中にその効果は遂次消失するために, 微生物の働き(2) (20) が活発となり, 100日以上の貯蔵では退色現象が進行し異臭やネトを発生し, 150日頃より腐敗感を呈した. 0°C•L-cys′-hyd′20%添加処理区では100~150日間前後の貯蔵は可能で, カロチン減少率も20~25%で形態的な品質は保持された.
[3] 真空凍結乾燥•L-cys′-hyd′添加区: 検体中の水分含有量が非常に低く2~3%であるため安定した貯蔵性を示した. 0°C貯蔵区では, 300日間貯蔵でもほとんど異状はなく, 5°C区100, 10°C区80日間貯蔵時より退色現象, 異臭, ネトなどが発生し始めた.
L-cys′-hyd′添加によるカロチン減少防止は, 0°C貯蔵•20%添加処理を行なえば十分長期貯蔵は可能な結果を得た. また, 短期間, もしくは100日間以内の貯蔵では0°C•5~10%L-cys′-hyd′添加で十分その効果が期待出来る結果を得た. なお, 全般的にカロチン減少率が50%を越えれば同時にかなり顕著に退色現象, 異臭, ネトの発生が見られる結果を得た.

著者関連情報
© 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top