園芸学会雑誌
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モモ果実の品質保持に対する低温流通の効果
青柳 光昭牧野 朗佐藤 治郎
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1976 年 45 巻 1 号 p. 89-96

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抄録

本試験はモモ果実を低温流通にのせた場合の品質保持に及ぼす影響について検討し, 品質向上のための条件を明確にするため行つた.
1. 現在収穫されている熟度 (市場出荷熟度) の果実を収穫し, 低温流通 (3°C) にのせても, 常温流通である今日のモモより食味ならびに品質が向上することは認められなかつた.
2. 完熟果を収穫して低温流通にのせた場合のモモは, 今日の常温流通のモモより食味ならびに品質が秀れた. とくに, 全糖含量の高い品種である愛知白桃や白鳳でその傾向が顕著であつた.
3. わが国の短い流通時間 (4日間) 内での品質変化を低温流通と常温流通とで比較すると, 低温流通では全糖含量, 酸含量, 果実硬度および果皮色がいずれもほとんど変化しないのに対して, 常温流通では全糖含量および酸含量の変化は少ないが, 果実硬度および果皮色は著しく変化した.
4. 収穫時の熟度と品質については, 全糖含量がやや未熟果から完熟果までは熟度進行に伴つて増加し, やや過熟果になると減少した. 酸含量は完熟果までは熟度の進むにつれて減少し, 完熟果とやや過熟果では同じであつた. 果実硬度ならびに果皮色 (地色) は熟度の進行に伴つて急速に低下又は黄化した.
5. 完熟果を収穫し低温流通にのせた場合のモモが, 市場出荷熟度果を収穫し常温流通している今日のモモより食味および品質が秀れた理由は, 流通間の取扱い温度によることもさることながら, 収穫時の熟度による影響も大きいものと推察された. したがつて, 低温流通機構の確立により, より高品質なモモを供給するためには, 完熟果を収穫することが必須条件であると考察された.

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