園芸学会雑誌
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川野ナツダイダイ成木の果実の肥大と果汁の酸含量の変動に及ぼす摘果の影響
富田 栄一夏見 兼生
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1977 年 46 巻 3 号 p. 289-296

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抄録

20年生川野ナツダイダイ樹を用いて, 7月に摘果処理を行い, 摘果区(83葉ないし92葉に1果の割合)と無摘果区(62葉ないし69葉に1果の割合)を設け, 果実の肥大および果汁の酸含量の樹内変動に及ぼす影響をみた.
1. 摘果を行うと, 果実の肥大がよくなってL, M級の果実が多くなり, 階級が上昇した. ちなみに, S級以下の小果の割合をみると, 摘果区で2.1%ないし23.3%なのにたいし, 無摘果区では47.2%ないし49.1%であり, 明らかに無摘果区で多かった. 結果部位別にみた2月調査の平均果実重は, 摘果区で328~376g, 無摘果区で257~381gの範囲にあり, 摘果区では結果部位による差が小さいのにたいし, 無摘果区では著しく大きかった.
2. 1樹内の果汁の酸含量の分布(2月調査)は, 摘果区で1.4~2.3%, 無摘果区で1.5~2.9%の範囲にあり, 酸含量のバラツキは明らかに摘果区で小さかった.平均酸含量はそれぞれ1.78%, 2.19%であり, その変動係数は9.6%, 13.7%であった. 結果部位別に酸含量をみると, 摘果区で1.74~2.01%, 無摘果区で1.81~2.48%の範囲にあり, 摘果区では結果部位による差が小さいのにたいし, 無摘果区では差が大きかった.
2月に採収して常温貯蔵し, 4月に調査したところ, 1樹内の酸含量の分布は, 摘果区で0.9~2.0%, 無摘果区で1.1~2.5%の範囲にあり, その平均酸含量はそれぞれ1.45%, 1.68%であった. 貯蔵によって, 酸含量は減少したが, そのバラツキを小さくする効果は認められなかった.
3. 果実重, 結果枝の葉数と果汁の酸含量との相関関係をみると, 果実重と酸含量および結果枝の葉数と酸含量の間には, 2月および4月調査とも摘果区, 無摘果区の両方で有意な負の相関が認められた.
果実重と酸含量の単相関係数は, 摘果区でr=-0.19ないし-0.33なのにたいし, 無摘果区ではr=-0.71ないし-0.72と高かった. また, 結果枝の葉数と酸含量では, それぞれr=-0.49ないし-0.28, r=-0.37ないし-0.17 であった.

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