園芸学会雑誌
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果実, そ菜のアスコルビン酸に関する生理化学的研究
(第4報)低温障害発生時のフェノール物質の代謝に関与するアスコルビン酸の作用機作-とくに貯蔵ピーマン果実の種子について (そのI)
山内 直樹稲葉 誠緒方 邦安
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1978 年 47 巻 2 号 p. 273-281

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抄録

本研究は, 貯蔵ピーマン果実の種子を用い低温障害(かっ変) 発生時のフェノール物質の代謝に関与するアスコルビン酸の作用機作を明らかにするため行なわれたもので, 本報では低温障害発生に伴うフェノール物質含量ならびに還元型アスコルビン酸 (ASA) 含量の変化を調べるとともに, フェノール物質の生成およびASAの酸化に関与している数種の酵素活性の変化について検討を行った.
1. 貯蔵ピーマン果実の種子の還元性物質は, 障害発生に伴いASA含量が急激に減少するが, ASA以外の還元性物質 (システイン, 還元型グルタチオン, NAD(P)H) 含量は幾分増加することが認められた.
2. 貯蔵ピーマン果実の種子のフェノール物質含量は, 1°C貯蔵1日で総フェノール, o-ジフェノール含量とも増加し, 以後減少した.
3. フェノール物質の生成系に関与しているG-6-Pdehydrogenase, 6-P-G dehydrogenase, Shikimatedehydrogenase ならびにかっ変発生に直接関与している Polyphenoloxidase (PPO) 活性を調べたとろ, 6P-G dehydrogenase 活性は1°C貯蔵で増加を示し, G-6-P dehydrogenase, 6-P-G drehydrgenase 活性とも1°C貯蔵の方が20°C貯蔵よりも貯蔵4日頃まで高かった. Shikimate dehydrogenase 活性は1°C貯蔵3日のかっ変発生時まで急激に増大した. しかしPPO活性は1°C, 20°Cとも貯蔵に伴い増大し, その後1°C貯蔵ではかっ変の発生に伴い低下がみられた.
4. ASAの酸化に関与する Ascorbate oxidase, PeroxidaseCatalase 活性は, Ascorbate oxidase Peroxidaseとも1°C貯蔵での活性は20°Cのものより低く,Catalase 活性は1°C, 20°Cで相違なくかつ貯蔵中あまり変化がみられなかった.
これらのこ. とからASAの減少は Ascorbate oxidase などによる酵素的酸化よりも, o-ジフェノールの酸化物であるo-キノンを非酵素的に還元することによる. ものであると推察した. さらに Oxidized ascorbate reductase活性の低下もASAの減少に関与しているものと考えた.

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