園芸学会雑誌
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川野ナツダイダイ成木の果実の肥大と果汁の酸含量に及ぼす開花時期の影響
富田 栄一夏見 兼生
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1979 年 48 巻 1 号 p. 1-8

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抄録
20年生川野ナツダイダイ成木を用いて, 1樹内の開花時期の早晩と果実の肥大, 品質との関係を2年間にわたって調査した. 1976年には着果数を308果とし, 1977年には451果として, 結果量の多少による影響もみた.
1. 果実の結実歩合は開花時期の早いもので低く, 遅くなると高くなった. 開花時期の遅いものでは結果枝の葉数が多くなって, 有葉果の割合が高くなった.
2. 果実の肥大は開花時期の早いもので優れており, 1976年には12月6日の果実の横径は, 5月13日で100mm, 5月18日で98mm, 5月24日で95mm,5月29日で92mmであった. 収穫時の果実の階級別割合をみると, L級以上の大果の割合は, 1976年で26.6%, 1977年で10.2%であり, 1果平均重はそれぞれ323g, 301gであり, 果実の肥大は着果数の少ない1976年でやや良好であった.
開花時期別の果実重は, 開花時期の早いものほど大きく, 1976年には5月13日開花のものと5月29日開花のものとの差は75g, 1977年には5月6日開花のものと5月23日開花のものとの差は69gであった.
結果部位別の果実重は, 上部で最も大きく, 次いで下部の外成りで, 下部の内成りで最も小さかった. 上部と下部の内成りとの果実重の差は, 1976年で106g, 1977年で63gであった.
3. 1樹内の果汁の酸含量の分布は, 1976年で1.6~2.9%, 1977年で1.8~3.2%の範囲であり, 平均酸含量はそれぞれ2.13%, 2.39%であった. 結果枝の葉数が多くなると, 酸含量は低下した. 酸含量には開花時期による差は小さかったが, 結果部位による差は大きく, 下部の内成りで最も高かった.
4. 以上の結果から, 果実の肥大には開花時期と結果部位による影響が大きく, 酸含量には結果部位と結果枝の葉数による影響が大きかった.
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