園芸学会雑誌
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ブドウ‘デラウェア’果実の成熟生理に関する研究
(第1報)果粒中の糖蓄積に及ぼす新梢上の葉数及び果粒中の多糖類, 有機酸の変化
松井 弘之湯田 英二中川 昌一
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1979 年 48 巻 1 号 p. 9-18

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抄録
ブドウ‘デラウェア’果粒における糖の蓄積機構を明らかにするため, 果粒の生長に伴う糖, 有機酸含量の消長, 新梢上の葉数の差異及び新梢上の全摘葉処理期の差異が糖の蓄積に及ぼす影響, 採取した果粒での糖含量の変化, 果粒中での多糖類や有機酸の還元糖化について調査した.
(1) 果粒中に含まれる糖は全生長期間を通じてグルコースとフルクトースが主であり, 第1期及び第2期では両者で2%前後であったが, 成熟が開始されると両者とも急激な増加を示し, 収穫期には両者合わせて約17%に達した.
(2) 果粒中のおもな有機酸はリンゴ酸と酒石酸であり, 前者は果粒の生長に伴い増加し, 第3期初期にピークに達した. 後者は開花1週間目にも高くなり, その後は減少し, リンゴ酸のピーク時に再び増加がみられ, その後は両酸とも急減した.
(3) 新梢上の葉数が8~16枚であれば糖の蓄積に差異がなかったが, それ以下では葉数の減少に伴って糖の蓄積が劣った. しかし, 全摘葉区においても約6%の糖の蓄積がみられた. また, 第3期中のいずれの時期に全摘葉し, 果房の直下あるいは果房の上下で環状剥皮しても糖の蓄積が認められた. 更に, 第3期中期以後では採取した果粒においても糖の増加が起った.
(4) 第1期の果粒より調整した不溶性物質を基質として, 第3期の果粒より抽出した粗酵素を添加培養すると, 培養液中の還元糖が増加した. また, 果梗よりリンゴ酸-14Cを吸収させた場合, 果粒中に取り込まれた14Cは第3期になると糖分画中に分配される割合が急増した.
以上の結果から, 果粒生長第3期における果粒中の急激な糖の蓄積には, 葉で合成された光合成産物の転流が極めて重要な働きをしているが, その他の要因として, 果粒中での多糖類や有機酸の還元糖化, 枝梢中の多糖類の還元糖化及び転流が関与しているものと考えられる.
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