抄録
ハクサイの葉の形態とその初期発育について外部形態的, 組織的に観察した.
1) 葉の形は葉位とともに変化し, 生育初期には葉位があがるにしたがって, 細長い形から幅の広い形へと変化していく. 葉面積は増加し, 中肋の幅は広がって, 中肋内部の葉脈の数も増加していった.
2) ハクサイの葉では葉身と中肋 (葉柄) が外観上はっきりと区別できる. 中肋には5本~十数本の葉脈がほぼ平行に走り, 各葉脈の周囲には柔組織が著しく発達しているが, 普通向軸側の方がよく発達していた. 葉脈は太いものでは数本の維管束から構成され, 各維管束は形成層と, その両側にある木部, 師部, 繊維細胞からなっていた.
3) 毛茸は主に葉脈部に沿って発生し, 単細胞である. その発生は他の表皮細胞と著しく異なる被染度と, 大きな核•仁が認められることによって区別された.
4) 葉身の表皮は一層で, さく状組織, 海綿状組織には多数の葉緑体がある. 表皮からは気孔が分化するが, その配列は一定していない.
5) 葉身には網目状に葉脈が走り, 葉脈の周囲の細胞は葉脈に沿って軸性を持ち, 太い葉脈の周囲の柔細胞は中肋と同様葉緑素が落して白く見える.
6) 生育初期には, 出葉間隔は生長するにしたがって短くなった.
葉原基の中には, 発生と同時に前形成層が観察され, 以後葉原基はその先端•周縁で前形成層を分化しながら発育していく. 前形成層は発達して維管束に分化していくが, その過程で脈間形成層が観察される時期があった.
7) 葉は発生後, 最初中肋的な組織が形成され, その後周辺に形成された葉身の広がりが優占し, 最後に中肋が会体を引き伸ばすように伸長する.
8) 葉原基の発生する方向は生育段階によって変わり, 初期にはほぼ垂直に発育するが, その後葉原基は茎頂の上にかぶさって発育するようになり, 互に重なって小さな結球を形成した.
9) 今までに記載のない, 大きな該と仁を持ち, 濃く染まる巨大な細胞の集まりが観察された.