抄録
‘スカット•オブ•アレキサンドリア’の縮果病の発生に及ぼす要因について調査し, 同時に縮果病と日射病の組織化学的な相違について検討した.
1. 多量かん水区で縮果病が多発した. しかし, 日射量, 土壌通気, 結実粒数, 葉数などの要因は縮果病の発生に影響を及ぼさなかった. 葉面に十分散水すると, W. S. D.は低く保たれたにもかかわらず, 縮果病の発生は抑制できなかった.
2. 断根すると樹体は激しい水分ストレスに陥ったが, 縮果病の発生は無断根区より少なかった.
3. 結果枝を環状はく皮して果粒の肥大を促進すると, 縮果病が多発した. 多くの場合, 縮果病と果径との間には密接な関係があった.
4. 1樹の亜主枝間で W. S. D. に差はなかったが, 縮果病発生率には差が認められた.
5. 縮果病では障害部及びその隣接組織にスベリン様物質が集積していた. しかし, 日射病ではスベリン様物質の集積は認められなかった.
以上の結果から, 縮果病の発生には樹体の水分状態以外の要因が関与しているように思われた.