抄録
GA処理によるブドウ•ベーリーAの無核果形成に新しょうの強さが影響することを確認するとともに, その原因を知るため2, 3の実験を行った.
1. ベーリーA長しょうせん定樹の結果母枝の先端からでた強い新しょうの花房は, 基部からでた弱い新しょうの花房に比べ, GA前処理時期, GA濃度, 年次, 樹勢のいかんにかかわらず, いずれも高い無核果率を示した. 一方, 短しょうせん定樹では強弱新しょう間の勢力差が長しょうせん定樹の場合より小さく, GA前処理時期, 年次を変えても, 強弱新しょう間で無核果率に明らかな差異は認められなかった.
2. ベーリーA短しょうせん定樹のGA処理果房において, 果粒の心皮数と無核果率の関係を調査した結果, 心皮数の増加に比例して無核果率は上昇した.
3. GA無処理のベーリーA及びデラウェア長しょうせん定樹において, 強い新しょうの果房は弱い新しょうの果房に比べ果粒当たり種子数が少なかった. しかし, 果粒の心皮数は, デラウェアではほとんどすべての果粒が2心皮で強弱新しょう間に差がなかったものの, ベーリーAでは種子数と逆の傾向を示し, 強い新しょうの果房では3心皮以上の, 弱い新しょうの果房では2心皮の果粒が占める割合が著しく高かった. 一方, ベーリーAの強弱いずれの新しょうでも, 果粒の心皮当たり種子数は心皮数の増加にともなって減少した. さらに, 強弱新しょう間で心皮数の同じ果粒同志を比較した場合, 種子数は強い新しょうで著しく少なかった.
4. これらの結果から, ベーリーAのGA処理において強い新しょうで高い無核果率が得やすい大きな原因は, 強い新しょうは弱い新しょうに比べ子房の心皮数が多く種子形成力, とくに心皮当たりでみた種子形成力が低いことにあると考えられる.