園芸学会雑誌
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50 巻, 2 号
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  • 大東 宏, 冨永 茂人, 小野 祐幸, 森永 邦久
    1981 年 50 巻 2 号 p. 131-142
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカンの栽植様式, 樹形, 整枝ならびにせん定などの樹体管理技術の合理化と果実品質向上対策を図るための基礎資料を得る目的で, 1977年の7月から12月までの間, 開心自然形と柵仕立ての杉山系普通ウンシュウミカン成木の異なる着果部位における果実品質を調査した. また, 1970年から1977年にかけて樹体の生育および収量調査を行った. 得られた成果は次のとおりである.
    1. 開心自然形樹の生育は柵仕立て樹よりもやや優れた. 1樹当たり収量は樹冠容積の大きい開心自然形樹において柵仕立て樹よりも多いが, 単位面積当たり収量は植付本数の多い柵仕立て樹においてはるかに多かった.
    2. 両樹形樹とも, 果実呼吸量は8月上旬から9月上旬の間に急速に減少し, その後11月までに次第に増加した. 果実呼吸量は, 両樹形樹とも内部のもので低く推移したが, 他の着果部位間の差違は明らかでなかった.
    3. 果実着色度は開心自然形樹では内部, 東西方位の上下部のもので優れ, 北方位の上下部のもので劣った.柵仕立て樹では東方位上下部のもので優れたが, 内部,西方位上下部のもので劣る傾向にあった. 成熟期の全カロチノイド含量は両樹形樹とも着果部位間に差違はなかった.
    4. 成熟期の果実重は樹冠各方位上部のもので大で, 樹冠内部のもので小であった. 樹形間, 他部位間の果実重に差違はなかった. 10月下旬までの積算日射量と果実重との間には高い水準の正相関があった. 積算温度や積算果実温と果実重との間の相関には有意性はなかった.
    5. 成熟期における果汁中糖度は両樹形とも樹冠表層部の下部や内部のものでやや低かったが, 一般に各着果部位間の差は小さかった. 成熟期における積算日射量と糖度との間には高い水準で正相関があった. また, 積算気温と糖度との間には11月中旬までは有意性のない負相関があったが, 11月下旬~12月中旬には高い水準で正相関があった. さらに, 積算果実温と糖度との間には11月下旬までは有意性のある正相関もあったが. ときとして有意性がないこともあった. しかし, 12月中旬の調査では果実温との間に正相関が増し, 高い果実温では糖度が増す傾向を示した.
    6. 成熟期における両樹形樹の各着果部位の滴定酸含量は内部のものでやや少なかったが, 他の部位間には差はなかった. 積算日射量, 積算気温および積算果実温との関係ではいずれの要因とも有意な関係はなかった.
    7. すなわち, 両樹形樹における各着果部位の果汁成分, 品質には樹冠方位, 上下部に関して一定の傾向がみられず, 瀬戸内地方に関するかぎり, 樹相の相違による樹冠内微気象変動は果実の品質に問題とするほどの差違をもたらさないものと考えられた.
  • 大東 宏, 冨永 茂人
    1981 年 50 巻 2 号 p. 143-156
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカンの栽植様式, 樹形, 整枝ならびにせん定などの樹形管理技術の合理化と品質向上対策の一環としての基礎資料を得る目的で, 1977年の7月から12月までの間, 杉山系普通ウンシュウミカン成本の開心自然形樹と柵仕立て樹の異なる着果部位における果汁中糖, 有機酸およびアミノ酸組成を調査した. 得られた成果を示すと次のとおりである.
    1. 果汁中糖類として果糖, ブドウ糖, ショ糖が検出され, 各着果部位とも果実発育の前半には果糖が圧倒的に多く, 10月下旬になるとショ糖との割合が逆転した. ブドウ糖は全期間を通してほぼ一定の割合で推移した. これら3中性糖含量は両樹形樹とも着果部位間に差違はなかった.
    2. 両樹形樹の各着果部位とも, 果汁中有機酸の成分としては遊離型, 結合型とを問わず, グルタミン酸, グルクロン酸, ピローグルタミン酸, 乳酸, 酢酸, ピルビン酸, リンゴ酸, クエン酸, コハク酸, イソークエン酸およびα-ケトグルタル酸が検出された. それらのうちクエン酸が主要酸であり, 次いでリンゴ酸, グルタミン酸が多量に含有され, これら有機酸が総有機酸含量の消長を強く支配した. 両樹形樹ともクエン酸, リンゴ酸,グルタミン酸などの主要酸や他の微量有機酸の消長には, 各時期を通じて樹冠内着果部位によって, 著しい差違はなく, 一定の傾向もなかった.
    3. 果汁アミノ酸成分としては両樹形樹とも各着果部位において, アスパラギン, グルタミン, アスパラギン酸, スレオニン, セリン, グルタミン酸, プロリン, グリシン, アラニン, システィン, バリン, メチオニン,イソーロイシン, ロイシン, チロシン, フェニールアラニン, γ-アミノ酪酸, リジン, ヒスチジン, アルギニンおよびアンモニアが検出された. これらのアミノ酸のうち, 各部位とも果実の成熟に伴ってプロリン含量が最も顕著に増加した. 一方, 着果部位によってアミノ酸組成には著しい変動があったが, 各時期を通じて一定の傾向はみられなかった.
    4. 総活すると, 本実験においては開心自然形と柵仕立て樹とを問わず果実品質, とくに糖類, 有機酸およびアミノ酸などの果汁成分には樹冠方位, 上下, 内外などの着果部位による一定の傾向がなく, 瀬戸内地方においては, 樹相の相違に伴う樹冠内微気象変動は問題とならない.
  • 梶浦 一郎
    1981 年 50 巻 2 号 p. 157-168
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. ニホンナシ在来品種374品種, 育成品種41品種の収穫期を在来品種の調査報告文献と保存品種の調査結果より求め, 収穫期の遺伝的変異を明らかにし, 収穫期, 果実利用季節から見た栽培品種の歴史的変遷, 地理的分化を調べた.
    2. 在来品種の収穫期の記録はその由来地での収穫期であるため, 品種内の収穫期産地間変異で補正して, 遺伝的な品種固有の収穫期を判定した.
    早生から晩生までを-5.0から5.5まで0.5間隔で22の収穫クラスを設定するとともに, 各クラスに相当する41の指標品種の収穫期から, 全国を八つの収穫季節区に分け, 各区ごとに指標品種による標準収穫曲線を作成した. 在来品種の収穫期をこの曲線に当てはめ, 同時期に収穫される指標品種の収穫クラスを求めて補正した.
    3. 神奈川県平塚市の収穫期で見ると, ニホンナシの収穫期は7月下旬から8月中に収穫される品種が早生,9月中と10月上旬の品種が中生, 10月上中旬以降, 11月中旬にかけて収穫される品種が晩生に相当した. 東北地方の収穫期間は3.1~3.5か月, 西南暖地においては3.8~4.2か月にわたると思われた.
    4. 江戸時代には晩生品種が多く, 貯蔵果実の利用も多いと思われ, 明治時代以降, 晩生品種の割合が低下して早生品種が増加した. 育成品種は早生が多く, 晩生品種の割合が著しく低かった.
    5. 北陸, 中部, 中国地方には早生から晩生まで広く在来品種が存在したが, 関東地方では早生が, 東北地方では中生が, 九州地方では晩生の在来品種が多かった.早生品種は関東, 関西に多く分布し, 九州, 四国地方,富山以北の日本海沿岸, 東北地方には分布しなかった.晩生品種は九州, 日本海沿岸地方に多く分布した.
    6. 収穫期から見た品種の変遷とその原因を考察し, 育成品種, 現在の栽培品種の遺伝的整一さを論じた.
  • 笹原 宏之, 多田 邦雄, 井理 正彦, 竹沢 泰平, 田崎 三男
    1981 年 50 巻 2 号 p. 169-175
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ウイルスフリー化を目的に, ウイルス病に汚染されている善光寺ブドウを材料とし生長点培養により完全植物体の再生及び増殖に成功した. 大きさ0.2~0.3mmの生長点組織を置床後緑化, 肥大するまでは, Murashige & Skoog (1962) の1/2濃度の培地へNAA, 0.1mg/l, BA, 1.0mg/l, カイネチン, 0.5mg/l, アデニン, 4.0mg/l, ショ糖, 30g/l, 寒天, 6g/lを添加し, pH5.8に調整したI-2培地が最も適していた. 続いて奇型葉の形成, 引き続いての多数の芽の形成には, I-2培地のNAAをIAA, 0.2mg/lにかえたIII-1培地が適していた. 引き続いての多数の芽から小葉の展開, 伸長にはII-1培地からBAとショ糖濃度を半減したII-4培地が適していた. 発根の誘導には, Galzy の培地 (1964) にNAA, 0.1mg/lを加えたIII-1培地が, そしてその後の地上部, 地下部の伸長にはIII-1培地からNAAを除いたIII-2培地が適していた. その後, はち上げ, 順化が行われた. この間最も短かいもので約4か月間を要した.
    また, 増殖は小葉の展開, 伸長した茎葉を分割してII-2培地 (II-1培地のショ糖濃度を1/2としたもの)へ移植し, 多数の芽の形成, 伸長を促進させ, その後II-4培地で再度小葉の展開, 伸長期まで到達させることで成功した.
  • 堀内 昭作, 中川 昌一, 加藤 彰宏
    1981 年 50 巻 2 号 p. 176-184
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 秋から冬にかけて, 露地および鉢植えのブドウ樹から切り枝を採取し, さし木することによって芽の休眠の深さの季節変化を調査した. 芽の休眠の程度は初秋に最も深く, 晩秋から初冬にかけて, その深さは徐々に浅くなった.
    2. このような休眠の状態を Kondo の方法に準じて, 条件的休眠, 自発的休眠, 強制的休眠の三つに区分した. 自発的休眠は好適条件下でさし木後20日以内に萌芽しない場合とし, 休眠の最も深い時期ではさし木後約70日でも萌芽しなかった. また, 強制的休眠は自発的休眠完了後の時期であり, 野外では気温が低いため萌芽しないが, もし, 温度が十分であれば20日以内に萌芽する.
    3. 自発的休眠の開始の過程は新梢上の芽の位置 (節位) によって異なっており, 休眠は新梢の基部付近の芽に比較して上部節位の芽ほど浅かった. また, 休眠覚醒期の開始は落葉開始期とほぼ一致していた.
    4. 枝梢における新鮮重当たりのでんぷん含量は休眠が深まるにつれて60から150mgに, 芽内では80から100mgに増加し, 覚醒期に入ると前者で90mg, 後者で60mgに減少した. これに対して, 糖含量は休眠の深い時期では新鮮重当たり20mgとほぼ一定の値を保ち, 覚醒期に入って40mgに増加した.
    5. 枝梢内 (芽を含む) の生長抑制物質を1年間の生長周期を通して調査した. 枝梢の酸性酢酸エチル抽出物はペーパークロマトグラフィーの後, 数種類の生物検定にかけた. 抽出物中に存在している主な酸性生長抑制物質はイソプロパノール:アンモニヤ:水=10:1:1(v/v)の展開溶媒系でペーパークロマトグラフィーにかけたとき, おおよそRf 0.6~0.9 (β-inhibiter zone) に展開した. この生長抑制物質はアベナ子葉鞘の伸長, ハツカダイコン種子の発芽, イネ幼苗の伸長, アベナの胚乳におけるでんぷんの糖化ならびにブドウの芽の萌芽に対して抑制活性を示した.
    6. この抑制物質の活性は休眠の開始や覚醒に関連して変化した. 4種類の展開溶媒系を用いた薄層クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーによって, この抑制物質中にはABAが存在していることが明らかとなった.
    7. ブドウの芽の酸素吸収量および炭酸ガス排出量は両者とも, 自発的休眠期間中, 新鮮重当たり, 1時間に300μlから200μlに減少した. その後, 強制休眠期間中はほぼ一定の値を示した.
  • 高木 伸友, 森本 正康, 間苧 谷徹
    1981 年 50 巻 2 号 p. 185-191
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ‘スカット•オブ•アレキサンドリア’の縮果病の発生に及ぼす要因について調査し, 同時に縮果病と日射病の組織化学的な相違について検討した.
    1. 多量かん水区で縮果病が多発した. しかし, 日射量, 土壌通気, 結実粒数, 葉数などの要因は縮果病の発生に影響を及ぼさなかった. 葉面に十分散水すると, W. S. D.は低く保たれたにもかかわらず, 縮果病の発生は抑制できなかった.
    2. 断根すると樹体は激しい水分ストレスに陥ったが, 縮果病の発生は無断根区より少なかった.
    3. 結果枝を環状はく皮して果粒の肥大を促進すると, 縮果病が多発した. 多くの場合, 縮果病と果径との間には密接な関係があった.
    4. 1樹の亜主枝間で W. S. D. に差はなかったが, 縮果病発生率には差が認められた.
    5. 縮果病では障害部及びその隣接組織にスベリン様物質が集積していた. しかし, 日射病ではスベリン様物質の集積は認められなかった.
    以上の結果から, 縮果病の発生には樹体の水分状態以外の要因が関与しているように思われた.
  • 植田 尚文, 内藤 隆次
    1981 年 50 巻 2 号 p. 192-198
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    GA処理によるブドウ•ベーリーAの無核果形成に新しょうの強さが影響することを確認するとともに, その原因を知るため2, 3の実験を行った.
    1. ベーリーA長しょうせん定樹の結果母枝の先端からでた強い新しょうの花房は, 基部からでた弱い新しょうの花房に比べ, GA前処理時期, GA濃度, 年次, 樹勢のいかんにかかわらず, いずれも高い無核果率を示した. 一方, 短しょうせん定樹では強弱新しょう間の勢力差が長しょうせん定樹の場合より小さく, GA前処理時期, 年次を変えても, 強弱新しょう間で無核果率に明らかな差異は認められなかった.
    2. ベーリーA短しょうせん定樹のGA処理果房において, 果粒の心皮数と無核果率の関係を調査した結果, 心皮数の増加に比例して無核果率は上昇した.
    3. GA無処理のベーリーA及びデラウェア長しょうせん定樹において, 強い新しょうの果房は弱い新しょうの果房に比べ果粒当たり種子数が少なかった. しかし, 果粒の心皮数は, デラウェアではほとんどすべての果粒が2心皮で強弱新しょう間に差がなかったものの, ベーリーAでは種子数と逆の傾向を示し, 強い新しょうの果房では3心皮以上の, 弱い新しょうの果房では2心皮の果粒が占める割合が著しく高かった. 一方, ベーリーAの強弱いずれの新しょうでも, 果粒の心皮当たり種子数は心皮数の増加にともなって減少した. さらに, 強弱新しょう間で心皮数の同じ果粒同志を比較した場合, 種子数は強い新しょうで著しく少なかった.
    4. これらの結果から, ベーリーAのGA処理において強い新しょうで高い無核果率が得やすい大きな原因は, 強い新しょうは弱い新しょうに比べ子房の心皮数が多く種子形成力, とくに心皮当たりでみた種子形成力が低いことにあると考えられる.
  • 大竹 良知
    1981 年 50 巻 2 号 p. 199-207
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ハクサイの結球現象に対する温度の影響を明らかにするため, 温度による葉の形態変化について調査した.
    1. 肉眼で数えられる葉数, 葉の大きさは, 温度処理開始後には高温区 (昼30°C-夜25°C) で最大となったが, は種5~6週間後には中温区 (昼230C-夜18°C) が最大となった. これは葉の生長速度は高温区で最大になるが, 葉数の増加は中温区で最大になるためであると考えられる.
    2. “包被葉”が現れ, それらによって“small head” が形成され始める葉位は低温区 (昼15°C-夜10°C) が最も低かった.
    3. 葉長-葉幅比は高温区で大きく, 低温区で小さかった.
    4. ハクサイの葉形について考察する時, 従来の葉長-葉幅比よりも, 中肋長-葉幅比を用いた方が, 葉形への温度の影響を見るには適していると考えられ, 高温ではこの比が大きく, 低温では小さくなる.
    5. 葉形および“包被葉”の現れる葉位から判断して, 生理的には低温ほど早く結球態勢に入ると考えられる.
  • 徳増 智, 柿原 文香, 加藤 正弘
    1981 年 50 巻 2 号 p. 208-214
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    (1) アブラナ科作物種子の休眠覚せいに対する乾燥貯蔵並びにさや中保存の効果を見るために, ナタネ, カラシナ, ミズナ, ダイコン及びハマダイコンのさやを収穫後, 直ちにさやから脱粒した種子とさや中に保存したままの種子とに分け, これらを各々室内に放置する区とデシケーター内に貯蔵する区とに分けた. 以後10日ごとに発芽試験を行い, 発芽率の推移を見た.
    (2) その結果, 脱粒して室内に貯蔵した種子は1~4か月の間に完全に休眠から覚せいした. ただしハマダイコンは例外でその覚せいは不完全であった.
    (3) 乾燥貯蔵の場合, ナタネでは休眠から早く覚せいしたが, カラシナ•ミズナ•ハマダイコンでは休眠覚せいは阻害された. また, ダイコンでは乾燥による効果は認められなかった.
    (4) さや中に保存した種子では, ナタネ•カラシナで休眠覚せいが遅れたが, ミズナ•ダイコン•ハマダイコンではさやの影響は認められなかった.
    (5) 更に乾燥貯蔵とさや中保存とを組合せた場合, 休眠覚せいに対する両者の作用はそれぞれ独立的であることが分かった. したがって, 発芽抑制物質は湿度によって影響を受ける物質と, さや中保存によって働く物質との2種が存在する可能性が強い.
  • 藤目 幸擴, 廣瀬 忠彦
    1981 年 50 巻 2 号 p. 215-224
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    展開葉が5枚になったカリフラワー‘野崎早生’とブロッコリー‘早生録’を用い, 昼夜温を変えて育苗を行い, 花らい発育に及ぼす生育初期の温度の影響並びに植物体の生育と花らい肥大との関係を調べた.
    1. 1日を2分して, 第2相 (午後5時30分から午前8時30分までの15時間) の温度を15°C (カリフラワー) および20°C (ブロッコリー) として, 第1相 (午前8時30分から午後5時30分までの9時間) の温度を15°, 20°, 25°及び30°Cと変えて両植物を35日間処理した. その結果, カリフラワーは第1相の温度が15°及び20°Cでのみ温度処理終了までに花らい形成し, ブロッコリーはいずれの温度処理区でも花らいを形成しなかった.
    2. 変温処理終了後, 各温度区とも露地区とトンネル被覆区に分けて, ほ場へ定植した. 両植物の出らい及び花らいの成熟は第1相の温度が高いほど遅れ, この傾向はカリフラワーにおいてブロッコリーより顕著であった. どの温度処理区においても, 出らい日並びに花らいの成熟日に, トンネル被覆による影響はほとんど認められなかった.
    3. カリフラワーの成熟時の花らい重は第1相の温度が高いほど増加する傾向があり, またどの温度処理区の花らい重においても, トンネル被覆の影響はほとんど認められなかった. ブロッコリーの成熟時の頂花らい重は, 処理温度の高低及びトンネル被覆の有無にかかわらずほとんど同じ値となった. 変温処理中に花らいを形成していたカリフラワーはすべて正常な花らいとなったが, ほ場で花らいを形成した場合, 多くの異常花らいが発生した.
    4. カリフラワーの成熟時の花らい重と出らい時の展開葉数, 成熟時の茎径及び総葉数との間に, それぞれr=0.37, 0.62及び0.32の有意な正の相関が認められた. ブロッコリーの成熟時の頂花らい重と出らい時の生育との間に有意な相関は認められなかったが, 成熟時の茎径との間にr=0.51の有意な正の相関が認められた.
    5. 以上の結果から, 少なくともカリフラワーの早生種に大きな花らいを着生させるためには, 花らい形成までに葉数を十分に増加させておき, さらにその後花らいが成熟するまで植物体全体におう盛な生育をさせることが必要と考えられる.
  • 池田 英男, 大沢 孝也
    1981 年 50 巻 2 号 p. 225-230
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    硝酸態窒素 (NO3-N) とアンモニア態窒素 (NH4-N) が等濃度で共存するpH 5.0及び7.0の培養液を用い, 20種類のそ菜を5~9日間水耕栽培して, そ菜のNO3-N及びNH4-Nの吸収特性を比較した. 同時に, 培養液のpHの変化についても調査した. その結果, NO3-NあるいはびNH4-Nのいずれを優先的に吸収するかは, そ菜ないしは培養液のpHによって異なったが, 供試そ菜を分類すると次のようであった. a) 培養液のpHと無関係にNH4-Nを選択的あるいは優先的に吸収するもの: イチゴ, トウモロコシ, メロン, キュウリ, レタス, ミツバ, セルリー, シュンギク, セリ. b) 培養液のpHが7.0の場合はNH4-Nを優先的に吸収するが, pH 5.0の場合は両形態Nを同程度吸収するもの: ナス, エダマメ. c)培養液のpHと無関係にNO3-Nを優先的に吸収するもの: ホウレンソウ, ハクサイ, コカブ. d) 培養液がpH5.0の場合はNO3-Nを優先的に吸収するが, pH 7.0では両形態Nを同程度吸収するもの: エンドウ, インゲンマメ, スイカ, トマト, キャベツ. e) 培養液pHが5.0の場合はNO3-Nを, pH 7.0ではNH4-Nを優先的に吸収するもの: ピーマン, 培養液のpHの変化については, NH4-Nが優先的に吸収される場合はpHが低下し, NH4-Nが吸収し尽くされると, pHは変化しないかあるいはむしろ上昇する傾向が認められた.
  • 大塩 裕陸, 仁井 文夫, 浪岡 日左雄
    1981 年 50 巻 2 号 p. 231-238
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    くん炭の物理的, 化学的性質を調べ, 養液栽培用培地としての適性について論じた.
    くん炭内部は多孔質構造を有し, 軽量性, 通気性, 保水性に大きく寄与することが推察された. くん炭の粒度分布, くん炭培地の三相分布を測定し, 粒の崩壊さえ防げればくん炭は優れた養液栽培用培地であることを確認した.
    焼成温度を変えて得られたくん炭の化学的性質, CECイオン吸着能, 最大容水量を調べ, 500°Cを起える焼成温度が好ましいことが示された. また, くん炭焼成温度の上昇につれてpHと水溶性カリの増大が顕著に認められた.
    くん炭の水浸漬試験の結果, pHは比較的短時間で安定するが, ECおよび水溶性カリは浸漬時間の経過につれて徐々に増加し, くん炭中のカリは比較的難容性であることが示唆された.
    くん炭培地における尿素のアンモニア化成と硝酸化成を調べると, 新しいくん炭中ではアンモニア化成は認めれらたが硝酸化成は認められなかった. しかし培地として使用後のくん炭では硝酸化成能が認められた.
  • 篠原 温, 鈴木 芳夫
    1981 年 50 巻 2 号 p. 239-246
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    レタスにおける光, 施肥条件がアスコルビン酸含量に及ぼす影響を調べた. 栽培は水耕法でおこない, 3水準のしゃ光と2水準の培養液濃度を組合わせて処理を行なったところ, しゃ光程度が強まるにつれ, 植物体の生体重, 葉数は減少し, 葉形は細長くなった. この時アスコルビン酸, 糖含量はともに減少し, 硝酸態窒素は増加する傾向を示した. 培養液濃度に関しては, 標準の1/4濃度で1/2濃度に比し, 生体重, 葉数とも減少したが, アスコルビン酸, 糖含量は増加した. これら培養液濃度の効果は, しゃ光率が高まるにつれて, みられなくなった.
    短期間の光条件の変化がアスコルビン酸含量に及ぼす影響を調べるため, 晴天日, 曇天日における葉内成分含量の日変化を調べた. アスコルビン酸, 糖含量およびクロロフィル含量は, 日中増加し夜間は低レベルに保たれる傾向を示した. 一方硝酸態窒素含量は, 夜間高く日中は低かった. この増減の度合は, 曇天日より晴天日の方がより顕著であった.
    以上の結果から, レタスにおける光,施肥条件の影響について, アスコルビン酸, 糖および硝酸態窒素含量の相互関係を考察し, 併せて実際栽培における応用を検討した.
  • 山本 博道, 岩元 睦夫, 萩沼 之孝
    1981 年 50 巻 2 号 p. 247-261
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    リンゴ•スイカの内部品質の非破壊測定法として, 打音から求められた固有振動数, 及びそれを試料の質量•密度で補正した指標と破壊試験 (一定速度での圧縮試験及び官能試験) により求められた果肉硬度との関係を検討した. 打音から求められた指標, みかけのヤング率, 破壊ひずみ, 及び, 官能試験での果肉硬度の評点の間には, 高い相関関係が認められた. リンゴの外観から専門家により, 3区分された熟度クラス間には, 果肉硬度の有意差は認められず, 外観からの内部品質評価の限界が明らかにされた. リンゴについては, これまでに提案された指標よりも, 密度についての補正を, より大きくした指標を用いる方が, 内部品質との相関係数が大きくなることが認められた. 本法は, 非破壊品質測定法として有用であり, 振動励起法に比較して, 単純であることが実用上の利点である.
  • 松尾 友明, 伊藤 三郎
    1981 年 50 巻 2 号 p. 262-269
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    4種類の強い渋味を有する幼果 (カキ•バナナ•カリン•キャロブ豆) より渋味成分であるタンニン物質を抽出, 精製し, その化学構造を比較, 検討した.
    それぞれのタンニン物質は縮合型タンニンの一般的な性質とともに次のような特異な性質を示した.
    1. メタノール溶液からリン酸二カリウムの添加により白沈した.
    2. 酸処理によりアントシアニジンを生成した.
    3. トルエン-α-チオール処理により高収率で分解され, フラバン-3-オールのチオエーテルを生成した.
    これらの知見は, この4種類のタンニン物質がプロアトシアニジン, ポリマーの共通な化学構造を持つことを示唆しており, それゆえ, 縮合型タンニンではなく, フラバナ (あるいは, フラボナン) タンニンが適切な名称であることを提唱した.
    比較的渋味のないビワの幼果に含まれるタンニン物質は類似の化学的性質を示したが, リン酸ニカリウムの添加によって沈殿しなかった. この物質はプロアントシアニジンオリゴマーであることが推測された.
    ゲルパーミエイションクロマトグラフィーの結果から, バナナ•カリン•キャロブ豆のタンニンのメチル化物はカキタンニンのメチル化物よりやや低分子であるが, たがいに近似した分子量を持つことが示され(Mn=1.4-1.0×104, Mn=0.7-0.2×104).
    酸とトルエン-α-チオール処理による分解生成物の同定から各タンニンの構成成分は以下のように推定された. カキタンニンがカテキン•カテキン-3-ガレート•ガロカテキン•ガロカテキン-3-ガレート (1:1.2:2.1:2.2, 各成分の量比) から構成されているのに比べて, バナナのタンニンはカテキンとガロカテキト (1:1.3), キャロブ豆のタンニンはカテキン-3-ガレート•ガロカテキン•ガロカテキン-3-ガレート (1:3.3:4.6) から成り, カリンとビワのタンニンではカテキンのみから構成されていることが明らかとなった.
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