園芸学会雑誌
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クリの渋皮とはいの接着力の数量化と, 接着におけるフェノール成分の役割
田中 敬一寿 和夫垣内 典夫
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1981 年 50 巻 3 号 p. 363-371

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抄録

クリの利用加工上の最大の難点は渋皮の剥 (はく) 皮の困難さにあり, 当場育種グループは, 剥皮性の良い優良品種の育成を行ってきた. 本報では渋皮の剥皮の難易度の数量化と, 剥皮の難易におけるフェノール成分の役割を検討した.
焼きグリの剥皮の難易度を peeling score を用いることによって数量化した. Peeling score は, はいを傷つけることなく, ナイフで渋皮を剥皮するに要する時間にょって4段階に区分して求めた. 焼きグリの peelingscore は生グリの剥皮時間と正の相関 (γ=0.78**) を示し, かつ, レオメーターによって測定された生グリでの渋皮とはいの接着力の強さとも正の相関 (γ=0.81**)を示した. この数量化はクリにおける渋皮の剥皮の難易度を簡単に評価することができ, クリの育種選抜の効率化に役立つものと思われる.
鬼皮を除いたニホングリを亜塩素酸ソーダで処理すると, 果肉表面を傷つけることなく, 渋皮を完全に除去できた. この事実は渋皮に含まれるフェノール成分が渋皮とはいとの接着に重要な役割をもっていることを示唆した.
渋皮中に含まれる遊離型フェノールと重合型フェノールを, 後者をゼラチンによって沈殿除去することによって, 分別定量した. 渋皮の剥けにくいニホングリで, 未熟から成熟まで渋皮中のフェノール含量を経時的に測定したところ, 全フェノール含量が果実の成熟につれて急激に増加し, この増加は主に重合型フェノールに依存した. このフェノール量と渋皮剥皮時間の経時変化の傾向は一致し, フェノール量と剥皮時間の間には正の相関(γ=0.89**) があった. 渋皮が剥けやすいチュウゴクグリでは, 全フェノール量は少なく, ニホングリの1/2以下であり, 重合型フェノールの増加量も少なかった.
これらの結果から, 渋皮中に含まれるフェノール成分, 特に重合型フェノールの蓄積がクリの渋皮剥皮を困難にする原因の一つであると考えられた.

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