抄録
キュウリの性表現について遺伝的背景の異なる品種を用いて, その性表現とエチレン生成に及ぼすエチレンの前駆物質1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)の効果を調べた.
ACC処理により, 性表現について遺伝的背景の異なる2品種のいずれにおいても雌性化が著しく促進された. 特に主茎上に雌花をほとんど着生しない‘大利根1号’においてその効果が著しかった.
ACCは, 供試したキュウリ3品種の子葉から得た葉円板よりのエチレン生成を著しく促進し, その量は対照区の約100倍にも達した. ACCによるエチレン生成の促進は, 幼植物の茎頂部に処理した場合にも同様に認められた.
エチレン生成量の品種間差異は, ACCを処理した場合と, 処理しなかった場合とで一致しなかった. したがって, 性表現の異なる品種間のエチレン生成能の差異は, ACCからのエチレン生成の段階より以前の段階に起因すると思われる.