抄録
カキ‘富有’果実を種々の発育段階で採取し, その後の呼吸量, エチレン生成量及び成熟の変化を, 25°Cで個々の果実について調べた.
ステージIの果実は (6,7月採取), 呼吸のクライマクテリック様増大と大量のエチレン生成を示し, 果実は軟化し, 果色は黄化した. このステージの果実はすべて, エチレン生成のピーク時にへたが脱落した. また, 呼吸量とエチレン生成量は極めてよく似た変化を示した.
ステージIIの果実 (8月採取) では呼吸量の増大は見られたが, ピークは出現しなかった. これに対し, エチレン生成においては明白なピークが見られた. 果実の軟化と果色の黄化も起こったが, へたの脱落は見られなかった.
ステージIIIの果実 (10月採取) では呼吸量の増大と少量のエチレン生成が見られたが, 両者ともピークは認められなかった. また果実の軟化は起こったが, へたは脱落しなかった.
エチレン生成に関しては, 果実の成熟 (発育) が進むにつれてその生成能が急速に減退するように思われた.
果実の呼吸量及びエチレン生成量を測定する場合には, 個体差の大きいことを考慮して, 個々の果実について測定することが望ましいと考えられた.
種々の点から検討した結果, カキ‘富有’果実はクライマクテリック型果実ともまたノンクライマクテリック型果実とも異なる型の果実のように思われた.