抄録
Pollination constant の甘ガキの脱渋機構の特異性を解明する手始めとして, 四つのタイプに属する甘ガキ及び渋ガキの果実間で, 渋味を構成するタンニン物質に質的な差異があるかどうかを明らかにする目的で実験を行った.
1. 果肉の酢酸エチル可溶区分中に認められる主要なタンニン成分はカテキンと没食子酸であり, それらの含量には pollination constant の甘ガキ果実と pollinationvariant の甘ガキ•渋ガキ, pollination constant の渋ガキ果実との間で明確な差異が認められた. すなわち,pollination constant の甘ガキにおいてはその生育期間を通してカテキンが常に含まれているのに対して, 没食子酸は生育初期を除いてほとんど認められなかった. 一方, pollination variant の甘ガキ•渋ガキ, 及び pollinationconstant の渋ガキではカテキンは6月中に急速に消失して認められなくなる反面, 没食子酸が6月中旬以降急増し, 7月下旬ごろまで検出された.
2. 果肉の含水アセトン抽出物中のタンニン物質の分子量分布を分子ふるいによるカラムクロマトグラフィー(担体CPG-10 120Å及び 2000Å) で調査した. タンニン物質はCPG-10 2000Åのカラムにより二つの分画に分離されたが, pollination constant の甘ガキ果実とそれ以外の品種の果実との間にはこの分画成分の分布に明らかな差異が認められた. pollination variant の甘ガキ及び渋ガキ, pollination constant の渋ガキにおいては, 幼果期においてすでに分子量の大きい成分が多くを占め,その後はほとんどvoid volume における単一の成分となった. 一方, pollination constant の甘ガキではタンニン物質は分子量の小さい成分がかなりの割合を占めており, 重合による分子量の増加は遅く, 自然脱渋の過程においても分子量の小さい成分が常に存在していた.