園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
ウンシュウミカン樹によるアルギニン-ε-15N2, 尿素-15N2及びアンモニウム-15Nの代謝
加藤 忠司山県 直人塚原 貞雄
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 54 巻 1 号 p. 26-32

詳細
抄録

ウンシュウミカン樹の自然状態の枝並びに切取った枝の皮質部及び木質部にアルギニン-ε-15N2, 尿素-15N2, 及びアンモニウム-15Nを与え, それらの代謝を調べた.また皮質部及び木質部より吸収されたアルギニンの新梢(5月上旬), または新葉 (6月下旬) への移動と新梢タンパク質への合成についても調べた.
アルギニンを与えた皮質部及び木質部のいずれにおいても, グルタミン•アミドN及びγ-グアニジノ酪酸に高い15N濃度が認められ, グルタミン•アミノN, アラニン, γ-アミノ酪酸及びプロリンにも活発な15Nの取り込みが認められた. また, 皮質部, 木質部に尿素及びアンモニウムを与えた場合の各アミノ化合物への15Nの取り込みパターンは, いずれもアルギニンを与えた場合に類似した. これらのことから, ミカンの樹はアルギニンの代謝経路の一つとしてγ-グアニジノ酪酸を含んだ経路を持っていること, 並びにアルギニンの分解に伴って生成する尿素またはアンモニウムは, グルタミン•アミドNに最も活発に取り込まれることが明らかになった.
枝の皮質部及び木質部より吸収されたアルギニンはそのままの形態で新梢に移動し, アルギニンのままで, あるいは他のアミノ酸に代謝されたのちタンパク質合成に利用された.
枝の皮質部と木質部の間で代謝内容に若干の差が認められた. 尿素あるいはアンモニウムを与えた場合, 皮質部ではグルタミン, アスパラギン及びプロリンの合成が活発であるのに対し, 木質部ではアルギニンの合成が活発であった. また, 皮質部ではアスパラギン•アミノNの15N濃度がアスパラギン酸のそれより高いのに対し, 木質部では逆に低かった.

著者関連情報
© 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top