園芸学会雑誌
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ニホンナシ幼蕾の発育に伴う花柱, 子房中のタンパク質の変化と自家不和合性
平塚 伸市村 一雄高橋 英吉平田 尚美
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1986 年 55 巻 2 号 p. 145-152

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抄録

ニホンナシの蕾受粉による自家不和合性打破と, 花柱, 子房中のタンパク組成との関連性を明らかにする目的で本実験を行った.
1. 蕾の発育ステージ0 (開花当日)~-8日 (開花8日前) の切り取った花柱からの花粉管出現率は, -4以上に発育したものでは自家受粉と他家受粉の差が明らかであったが, それより若い花柱では両者の差は認められなかった.
2. 花柱及び子房中の可溶性タンパク質含量は蕾の発育に伴って著しく増加したが, 組織内の濃度としてはほぼ一定であった.
3. 等電点電気泳動によって, 花柱の発育に伴って合成される2本のタンパクバンドが険出できた. それらの等電点はそれぞれ6.0と6.1であり, ともに糖タンパクであった. また, この2本のタンパクバンドは他の組織 (子房, がく, 花梗, 葯, 雄ずい, 花弁) 中では認められなかった. 子房のタンパク質の質的な差は, どの発育ステージにおいても認められなかった.
4. SDS電気泳動法によっても, 花柱の発育に伴って増加する2本のタンパクバンドが検出された. それらの分子量はそれぞれ5.2×104と5.8×104であった. 前者は子房, 花弁中にも存在したが, 後者は他の組織では量的にそれほど存在しなかった. また, 子房のタンパク質については, 各ステージでの差は認められなかった.
本実験で検出されたタンパクバンドは, 花柱が強い不和合性を示すようになる時期に花柱内で増加しており, また, それらのバンドの一部は花柱にのみ特異的に存在する糖タンパクであり, ニホンナシの不和合反応と関係があるものと推察された.

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