園芸学会雑誌
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春咲きグラジオラスの生態的品種分類
細木 高志寺林 敏浅平 端
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1986 年 55 巻 2 号 p. 199-206

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抄録

春咲きグラジオラス主要5系統から各1品種を選び, 開花に及ぼす温度, 日長, 遮光の影響, 花芽の分化•発達に及ぼす球茎の低温処理の影響, 球茎の休眠打破に及ぼす温度の影響, 耐寒性及び耐乾性の違いを調べ, 夏咲きグラジオラスと生態的にどのような関係にあるか考察した. 供試品種は, Herald 系の‘Comet’, Tubergenii 系の‘Charm’, Ramosus 系の‘Robinetta’, Colvillei 系の‘Albus’, Nanus 系と Herald 系の雑種‘Elvira’及び夏咲きグラジオラス‘Traveler’を用いた.
1. 開花に及ぼす温度の影響をみると,‘Comet’及び夏咲き品種‘Traveler’は, 20°Cより30-25°C (昼一夜) で生育させた方が早く開花した.‘Charm’は20°Cの方が早く開花し,‘Robinetta’や‘Albus’では, 30-25°Cで全く開花しなかった.
2. 開花に及ぼす日長の影響は少なかった. しかし, ‘Elvira’は長日より短日の方でやや早く開花したが, 他の品種では長日でわずかに早く開花した.
3. 開花に及ぼす遮光の影響をみると, ‘Comet’が遮光に最も弱く, 50%遮光ですべてブラスチングになった.‘Elvira’も遮光に弱く,‘Charm’が中間で,‘Robinetta’は最も強く75%遮光でも開花率100%となり小花数の減少もなかった.
4. 球茎の低温処理により‘Charm’,‘Robinetta’, ‘Albus’の花芽の分化•発達が促進されたが,‘Comet’や‘Elvira’では低温の効果はほとんどなかった.
5. 球茎の休眠打破には5品種とも高温貯蔵 (30°C) の方が低温貯蔵 (5°C) より効果があった.
6. 耐寒性は‘Robinetta’が最も強く,‘Comet’, ‘Albus’,‘Charm’が中程度で,‘Elvira’が最も弱かった.
7. 耐乾性は‘Robinetta’が最も強く,‘Charm’, ‘Albus’が中程度で,‘Comet’と‘Elvira’が最も弱かった.
8. 以上の結果から, 一群にまとめられていた春咲きグラジオラスは, 典型的な秋植え春咲き性を示す品種 ‘Albus’や‘Robinetta’から, 中間的な品種‘Charm’, さらに夏咲き種の性質を示す品種‘Comet’や‘Elvira’まで混在していることがわかった. また, それらの特性は品種の親となった野生種の生態的特性を反映していた.

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