園芸学会雑誌
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スターチス•シヌアータの種子春化苗が高温を受けるときの苗齢と脱春化との関係
吾妻 浅男犬伏 貞明
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1986 年 55 巻 2 号 p. 221-227

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抄録

スターチス•シヌアータの種子低温処理による超促成栽培の技術体系を確立するために, まず自然条件下で種子低温処理苗の脱春化が起こる時期を調べた. 次に, 種子低温処理した幼苗を脱春化を回避する温度条件に保った冷房ハウス (昼温27°C±2°C, 夜温17°C±2°C) で育苗し, 高温を受けるときの苗齢と脱春化との関係を検討した.
1. 催芽種子を2~3°Cで30日間低温処理したのち, 幼苗を戸外の自然条件下で育苗したところ, 9月11日より早く低温処理を終えた株は高温の影響を強く受け, 種子春化による抽だい, 開花促進効果が低下あるいは完全に消失し, 脱春化の現象が認められた.
2. 種子低温処理後の幼苗を冷房ハウス内の涼温条件下で育苗すると, 苗齢が進むにしたがって春化の効果が安定し, 展開葉が2~3枚以上に生長した苗は, 9月1日以降に自然の高温条件下に移しても脱春化は起こらなかった. さらに, 展開葉が8~10枚以上に生長した苗は, 8月下旬以降に自然の高温条件下に移しても脱春化は起こらなかった. これらの株は抽だい, 開花が著しく早まり, 1月までの早期の切り花本数が著しく増加した.
3. 種子低温処理後の幼苗を脱春化が起こらない温度条件で育苗することによって, 低温処理時期を早めることができた. 低温処理後の幼苗を高冷地あるいは冷房ハウスで育苗して脱春化を回避し, これらの株を8月下旬~9月上旬の早期に定植すると10月から切り花出荷することができた. この栽培法と現在行われている抑制栽培を組み合わせることによって, わが国でのスターチス•シヌアータの周年栽培が可能になるものと思われる.

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