園芸学会雑誌
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カキ果実の組織内ガス組成の経時的変化及び数種のガス環境条件が種子のエタノール生成に及ぼす影響
平 智杉浦 明苫名 孝
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1986 年 55 巻 2 号 p. 228-234

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抄録

pollination variant の甘ガキ (PVNA) 果実が樹上で自然に脱渋するのに対して渋ガキ (pollination variant (PVA) と pollination constant (PCA) の両者を含む) 果実が脱渋しない主な原因は, 果実発育中に種子から発生してくるエタノール等の揮発性物質の量の多少が大きくかかわっていると考えられる. 本研究では, 種子の揮発性物質, とくにエタノール生成能の差異が何によって左右されているかを検討するために若干の調査を行った. 結果の概要は次のとおりである.
1. 果実の発育に伴う種子からのエタノール発生は, カキ種子の本来の特性に加えて, かなり嫌気的な果実内ガス条件がその誘因の1つになっているものと思われた.
2. 果実よりとり出した種子を実験的に設定した種々のガス環境条件においたときのエタノール蓄積の様相及び種子の発芽に伴うエタノール発生の様相から, 概してPVNA品種の種子の方がPCA品種の種子よりエタノールを発生しやすいと考えられた.
3. 以上のことより, 種子のエタノール発生量の多少は, 主としてエタノール生成のしやすさの程度によっており, このことが種皮のエタノール透過性とあいまって, カキ果実 (PVNA, PVA, PCA) の脱渋性に反映しているものと推察された.

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