抄録
果実の成熟あるいは傷害に伴うエチレン生成に関連して, β-シアノアラニン合成酵素の活性, ACC及びCN-含量の変化を調査した.調査した果実のうちで, エチレン生成の著しいリンゴ果実で, β-シアノアラニン合成酵素活性が最も高く. 早生ウンシュウミカンの果皮で活性が最も低かった. 樹上で成熟しているリンゴ果実では, β-シアノアラニン合成酵素の活性は11月29日まで徐々に増加し, その後活性が急に増加した. エチレン生成量とCN-含量は11月29日を境に, その後増加する傾向が認められた. リンゴの果肉切片では, エチレン生成量は切断後24時間目にピークに達したが, β-シアノアラニン合成酵素の活性とCN-含量は36時間後にピークに達した. リンゴの果肉切片から発生するCN-量を測定したところ, 2.67±0.41ng/g F.W./hr (1.71±0.26pmol/g F. W./min) であった. 25°Cで貯蔵したカキ及びキウイフルーツ果実でも, 成熟過程において, ACC及びCN-含量, エチレン生成量, β-シアノアラニン合成酵素活性は付随的に変化した. 成熟果実や傷害を受けた果実で見られるシアン耐性呼吸の発達は, β-シアノアラニン合成酵素活性の増加と密接に関係しているように思われた.