抄録
リンゴの茎, 葉, 果実に含まれるアブシジン酸 (ABA) 量が, エレクトロンキャプチャー検出器を備えたガスクロマトグラフィー (GLC-ECD), 及びモノクローナル抗体を用いた酵素免疫分析 (ELISA-MA) 法によって, 一致するかどうかを確かめた.
遊離型と結合型ABAの定量のために, 各試料をメタノール抽出, 酢酸エチルによる分配, 薄層クロマトグラフィー (TLC) 分離などによって精製そしてメチル化後, GLC-ECDによって分離•定量したところ, 試料はABAの純品と一致する保持時間に明瞭なピークを示した. これらの明瞭なピークはガスクロマトグラフィー質量分析計 (GC-MS) による解析の結果, 主にABAから構成されることが確認された. 即ち, リンゴの各器官からの内生ABAはGLC-ECDによって定量的に分析できることが明らかになった.
ELISA-MA法によりリンゴの各器官に含まれる内生ABA量を定量したところ, 上述のようにGLC-ECDによる分析試料と同じ前処理をした場合には, 各器官に含まれるABA量はGLC-ECDによる値と良く一致した. 茎や葉の場合にはいくつかの前処理の段階を省くことができた. さらに, モノクローナル抗体のABAに対する結合性は非常に高いので, 茎, 葉, 果実それぞれ50, 50,200μg新鮮重のレベルでABAの検知が可能である.
以上より, ELISA-MA法による内生ABAの定量は, それぞれの試料に適した前処理法を行えば, 生体試料, 特にミクロ組織に含まれるABA量を定量出来る優れた方法であることが判明した.