園芸学会雑誌
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リンゴわい性台樹の適正着果量と乾物生産の分配
小池 洋男吉沢 しおり塚原 一幸
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1990 年 58 巻 4 号 p. 827-834

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抄録

M. 26わい性台木における‘ふじ’の適正な着果基準を確立するため, 葉果比と収量, 果実品質並びに生育との関係を検討するとともに, 着果量と純生産量の分配及び生産力について検討した.
1. 7月上旬に決定した葉果比と収量, 果実品質, 新梢重, 及び次年度の花芽率との間には高い相関関係が認められた.
2. 平均果重及び果実糖度は葉果比の増大とともに増加したが, 葉果比が90程度以上では増加が鈍り, その値は品種特性発現の限界と判断された.
3. 新梢重並びに次年度の花芽率は葉果比の増大とともに増加したが, 収量は葉果比の増大にともなって減少する傾向であった.
4. 葉果比と果実品質, 生育並びに収量との関係の回帰式による推定値から, 長野県果樹試験場のほ場条件におけるM. 26台木の‘ふじ’は50~60程度の葉果比により高品質果実を安定生産出来ると予測された.
5. 普通着果のM. 26台木における9年生の‘ふじ’の平均純生産量は8,357g/樹•年で, 10a当り167本植えに換算すると1,936kg/10a•年となり, 多着果樹の8,133g/樹, 1,358kg/10a•年との間に大きな差は認められなかった.
6. 普通着果樹の単位葉量当り純生産量 (純生産量/乾物葉重) は8.34g, 多着果樹では11.00gとなり, また単位葉量当り果実生産量 (乾物果実生産量/乾物葉重)は普通着果区が4.53g, 多着果区が8.34gであった.着果量を多くすると単位葉重当りの果実生産量が急増し, 単位葉重当りの純生産も増加する結果となった.
7. 純生産量は普通着果樹で49%, 多着果樹では73%が果実へ分配された.
8. 長野県果樹試験場 (須坂市) で栽培されている普通着果の9年生‘ふじ’/M. 26の単位葉量当り純生産量を8.0gと仮定すると, 本研究の供試樹は1,397kg/10a•年の乾物生産量となり, その約50%が果実に分配されるため, 理論上の新鮮果実4,103kg/10a•年の生産が予測される.
9. 以上のことから, M. 26台木における成木の‘ふじ’の着果基準は50~60枚程度の葉果比が栽培上適当と判断出来, 標準的な園では4~5tの収量を目標とすることが可能と思われる.

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