園芸学会雑誌
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リンゴの後期落果防止に及ぼすジクロルプロップ及びMCPBの影響
塚原 一幸小池 洋男高橋 英吉平田 尚美
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1990 年 59 巻 1 号 p. 107-114

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抄録
ジクロルプロップ及びMCPBのリンゴの後期落果抑制剤としての効果的な使用方法を明らかにするため, 濃度, 処理回数, 処理時期と落果抑制効果について検討するとともに, その効果の品種間差異, 年次間変動とその要因, 果実品質に及ぼす影響並びに処理部位と抑制効果との関係について調査した.
1. ジクロルプロップは, 供試品種の全てにおいて, 30~45ppm濃度の収穫盛期25日前と15日前との2回散布で落果抑制効果の高いことが明らかとなり, 15ppm2回散布の抑制効果は, ‘スターキング デリシャス’で高かったものの, ‘つがる’では劣った. 散布回数については, ‘つがる’及び‘スターキング デリシャス’で2回散布の落果抑制効果が1回散布より優れるようであったが, ‘紅玉’ではその差が明らかでなかった.
2. MCPBの落果抑制効果に及ぼす濃度の影響を‘つがる’で検討したところ, 30~70ppm 2回散布処理で高い抑制効果を認めたが, 濃度による落果抑制効果の差異は明らかではなかった. また, 30ppm 2回散布と3回散布を比較すると, 3回散布の落果抑制効果がより優れる傾向にあった. MCPB30ppm 2回散布の落果抑制効果は, ‘スターキング デリシャス’においても認められたが, ‘ジョナゴールド’では認められず, ‘王林’では落果を助長した.
3. 果実品質に及ぼすジクロルプロップ15~45ppm2回散布の影響は認められず, MCPB30ppm 2~3回散布では着色が促進され, 成熟も若干促進される傾向があった.
4. ジクロルプロップの落果抑制効果の年次間差異を, ‘つがる’で10か年にわたって検討したところ, 45ppm 2回散布区で常に抑制効果は認められたが, 変動率は78.8であった. 8月の降水量が少ない年に効果が低減する傾向にあったので, 乾燥時にかん水を行い, ジクロルプロップの落果抑制効果を無かん水区と比較したところ, かん水区において高い抑制効果が得られた.
5. ジクロルプロップの5000ppmラノリンペーストを, 果柄, 離層部周辺, 果台, 果台枝に分けて塗布したところ, 果柄処理では落果抑制効果が得られず, 離層部周辺, 果台並びに果台枝への処理で抑制効果の発現することが明らかとなった.
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