園芸学会雑誌
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リンゴ果実の生長に伴うデンプンの量的及び形態的変化
大宮 あけみ垣内 典夫
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1990 年 59 巻 2 号 p. 417-423

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抄録

生長過程におけるリンゴ果実‘ジョナゴールド’のデンプンの量的, 形態的変化を部位ごと(果心部, 果肉部, 果皮部)に解析した. 各部位とも5月24日(開花後31日)からデンプン含量の増加が認められ, 果心部は8月3日, 果肉部は7月19日, 果皮部は8月16日に各々最高値を示し, その後急激に減少した. デンプンの消失は果皮部において最も遅く, 収穫時(9月26日)には果心部及び果肉部ではデンプンはほとんど消失したが(_??_0.1%), 果皮部では0.4%残存した. 6月20日, 7月19日, 8月16日, 9月1日の4時点の平均粒径は, 各部位とも8月16日に最大値を示した. したがって, 果肉部や果心部では8月16日の新鮮重あたりのデンプン量は減少傾向にあるものの, デンプンの合成は引き続いておこっていることが示唆された. 粒径分布のパターンは各時期を通して顕著な変化は認められなかった. しかし8月16日にややブロードになることからこの時期にはデンプンの合成と同時に分解も盛んになるものと思われた. SEMによる観察では, 成熟期のデンプン粒は表面が滑らかで, 2~数個のデンプン微粒子よりなる複粒構造を呈していた. デンプン含量が減少している時期においても, 表面構造に変化は見られず, また, デンプンが分解され内部が空洞になったアミロプラストの残骸が頻繁に認められた. したがって, デンプンの分解は内部侵食によっておこることが示唆された. デンプン粒の形態や粒径分布のパターンに部位ごとの差は見られず, デンプンの合成と分解は各部位とも同様の機構によっておこるものと思われた.

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