園芸学会雑誌
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リンゴ枝の耐凍性増大と過酸化物分解機能の霜による誘導
黒田 治之匂坂 勝之助千葉 和彦
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1990 年 59 巻 2 号 p. 409-416

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抄録

耐凍性増大並びに過酸化物代謝機能と霜との関係を明らかにするために, 降霜前後におけるリンゴ枝の耐凍性と過酸化物分解機能を調べた. 枝の耐凍性は初霜と2度目の降霜後, いずれも約2週間後に増加した. 皮層部における五炭糖リン酸回路に共役した過酸化物分解系の酵素活性は, 初霜後4日以内に増加し, 2度目の降霜直後に再び増加し, いずれも耐凍性増大より早く増加した. 霜に対する木部の五炭糖リン酸回路に共役した過酸化物分解系の酵素活性は, 皮層部のそれらと異なっていたが, それらの酵素活性も霜により増加した. すなわち, G6PDH, HK, PGI, GA3PDH, GSPOD活性は初霜によって越冬期の活性水準に達し, GSRとAsAPOD活性は初霜と2度目の降霜直後に, またDHARD活性は2度目の降霜直後に増加した. 一方, PODとカタラーゼの活性は上記の酵素とは異なり, 霜による影響はみられなかった. また, G6P濃度は皮層部, 木部ともに初霜後と2度目の降霜後, いずれも耐凍性増大の前に増加した. F6P, G1P, GSH の濃度は降霜直後に一時減少してから耐凍性増大の前に増加するパターンを示したが, GSSG濃度はその逆の変化を示した. アスコルビン酸は濃度の保持機能が高く, 霜による影響を殆ど受けなかった. 以上の結果から, 秋から冬にかけての耐凍性は, 霜によって誘導される五炭糖リン酸回路に共役した過酸化物分解機能を作用機構として増大するものと考えられる.

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