1990 年 59 巻 3 号 p. 509-517
果実表面の裂開を引き起こす原動力である表面の応力の分布を解析するシステムを作成し, これを用いてオウトウ8品種の果実表面応力の分布を解析し, 裂果の程度および裂開型との関係を調査した.
1. 本システムは原理的には“殻の理論”を果実表面状の殻に近似的に適用した Considine•Brown(1981)の方法に基づいたが, さらに, 一歩進めて, 実際の果実の応力分布を解析できるように工夫された. 本システムでは, 果実縦断面の輪郭線の平面座標をコンピュータとデジタイザを利用して読み取りさえすれば, 輪郭線上の連続点の経線方向および緯線方向の曲率半径等を計算し, 応力分布や“形状係数”の分布を計算, 作図することができた.
2. オウトウ果実表面の応力は膨圧上昇の影響を受けて6月上旬より急に増大した.
3. 品種により応力集中の程度や分布形が多少異なったものの, いずれの品種も経線方向の応力は果頂部とこうあ部に, 緯線方向の応力は胴部に集中した. また, この応力分布と裂開型および裂開の分布との間にほぼ密接な対応関係が認められた.
4. オウトウ8品種間の各部位間の応力量を比較したところ, 多くの部位において, 多くの品種間で有意差が認められた. また, 8品種間の裂果発生率(強制裂果)と応力の強さとの間に有意な正の相関関係が認められた.