抄録
柘植ら (9) は宿主特異的毒素を生成する病原糸状菌によって起こる病害14例のうち, 7例がAlternaria属菌によるものであることを報告している. イチゴ黒斑病もその一つであるが, 従来本病に関する研究は主に病理学的あるいは生理学的立場から,.本菌の形態的特徴(13) や本菌の生成するAF一毒素の諸性質, 作用機作,化学構造式の決定など (3,4,5, 10) について詳細に行われてきた. しかし, 育種学的見地からなされた研究は少なく, これまでイチゴ黒斑病感受性の品種間差異 (3,12) や黒斑病感受性品種である'盛岡16号'を用いて遺伝解析を行った報告 (11) が若干あるに過ぎないため,本病の感受性の遺伝や感受性品種の由来については不明な点も多い.
そこで本研究では, イチゴ黒斑病菌に対する品種 (系統を含む計50種) の自殖実生の反応に加えて,感受性品種である'盛岡16号'と'Robinson'ならびに抵抗性品種である'宝交早生'と'Donner'の4品種の組合せによる交雑実生の反応についても調査し, 黒斑病感受性の遺伝や黒斑病感受性品種の由来について明らかにしようとした.