抄録
シュッコンカスミソウGypsophila paniculata L. の葉条の生育と根の関係を低温要求性の異なる'ブリストル•フェアリー'栄養系統を用いて検討し, 以下の結果を得た.
秋に自然条件下で栽培すると, 09系統および13系統のシュートは花芽を形成し, 一方04系統および20系統ではロゼットを形成した. しかし, ロゼットの形成は, 新根の生長低下を伴わなかった.
他方, 13系統と20系統の接ぎ木を行い, 13系統の低温要求量のみが充たされるように低温処理を行った場合, 20系統を穂木とした個体は, 13系統を穂木とした個体に比べて伸長の開始が遅れ, 開花率は100%に達しなかった. 穂木を13系統とした個体のなかでは, 台木を20系統とすると, 台木を13系統とした場合に比べて, 伸長の開始が6週間以上遅れた.
04系統では, 葉条と根の両方に55日間の低温処理を行うと, その後旺盛に生長し開花した. 根のみに低温処理を行った場合には, 低温処理期間中にすべての個体が開花に至った. この個体を低温処理後に切り戻し,基部の低温にさらされていなかった節に着生する側枝を残して栽培した場合, 側枝は旺盛に生長し高い開花率が得られ, 根で感応した低温の効果は開花後も保持されているものと考えられた.
以上の結果から, 葉条の生長と開花には, 低温遭遇時の根および根域の環境が強く影響することが明らかとなった.