園芸学会雑誌
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シンビジウムの花茎伸長における花器官および植物ホルモンの役割について
大野 始加古 舜治
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1991 年 60 巻 1 号 p. 159-165

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抄録
小型シンビジウムの交配種サザナミ'ハルノウミ'の花茎伸長における花器官および植物ホルモンの役割を明らかにするため, 花器官の除去や生長調節物質処理の花茎伸長に及ぼす影響を調べた. 全花らいを除去すると花茎伸長は著しく抑制された. 花らいのうち, 花茎基部側の3分の2を除去しても花茎伸長はほとんど影響を受けなかったが, 先端側の3分の2を除去すると, 花らいを除去した部分の伸長が著しく抑制された,全花らいからやくだけを除去しても, 全花らいを除去した場合と同様, 花茎は伸長しなくなった. 全花らいから花被をすべて除去しても同様の結果が得られた.「花飛び」現象を起こす高温条件では花茎は伸長しないが, NAA処理により花らいの有無に関係なく花茎伸長が誘起された. やく除去部へNAA処理しても同様の効果が得られた. NAA処理では, いずれの場合も花らいは開花に至らなかった. GA3処理は花茎伸長と花らいの発育•開花のいずれをも誘起したが, GA3の花茎伸長作用は花らいを除去した花茎では見られなかった. これらの結果から, シンビジウムの花茎伸長には発育中の花らいによって供給されるオーキシンが主として関与しており, 花らいの発育や花茎伸長にとってやくが特に重要な器官であることや, GA3が直接花茎伸長を誘起するのではなく, 花らいを正常に発育させることにより花茎を伸長させていることが示された.
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