抄録
ブドウ属植物が地球上に発生したのは, 数千万年前の白亜紀後期であるとされているが, 約100万年前の氷河期にはほとんど絶滅に瀕した. しかし, 氷河期が終わり, 生き残ったものに, アジア西部原生, アジア東部原生および北アメリカ原生の3群がある (4,5).わが国にもブドウ属植物が分布していたことは古くから知られているが, これらを積極的に栽培•利用してきたという記録は見当たらない. しかし, わが国の野生ブドウにも, 耐病性, 耐湿性, 四季成性, 耐寒性,耐塩性および無休眠性など優良な遺伝的特性を有するものがあり, 今後, これらを育種素材として利用することにより, 従来見られない優れた品種の育成や台木としての利用が期待される.
著者ら (8,9) は, ここ10数年来, わが国原産野生ブドウについての知見を得るため, その探索と収集につとめ, これらを同一圃場に栽植し, その形態および生態的特性を調査してきた. また, 韓国および中国の野生ブドウについても比較対照として, 2,3の調査を行ってきた.
今回は, これらのうち日本原産野生ブドウの種類と分布および葉の形態学的特徴について報告する.