園芸学会雑誌
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イチゴの花芽形成時における雌ずいの分化時期と発育速度の変異
吉田 裕一時實 充洋藤目 幸鑛中條 利明
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1991 年 60 巻 3 号 p. 619-625

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抄録

イチゴ'愛ベリー', '宝交早生', '麗紅', 'とよのか', '女峰'の5品種を用いて, 花床上での雌ずいの分化ならびに発育と開花時の雌ずい形質について調査し, '愛ベリー'の奇形果発生要因について検討した.
1.'愛ベリー'は花床上の雌ずい列数が多く, 雌ずい分化開始から終了までの期間が他の4品種より長かった. しかし, 雌ずいの分化速度は'宝交早生'以外の3品種より速かったことから, '愛ベリー'は雌ずい列数が多いために, 花床頂部と基部の雌ずいの分化時期の差が大きくなると考えられる.
2.'愛ベリー'では他の品種と異なり, 花床頂部の雌ずいは基部の雌ずいより生長が遅いため, 開花時の花床頂部と基部の雌ずいの子房幅の差が大きくなる. さらに, 花床頂部の雌ずいが分化してから開花までの期間が他の品種よりも短く, 未発育のまま開花するため,花床頂部に不稔種子を伴う奇形果が形成されると考えられる.
3.'宝交早生'は, 雌ずい分化開始から終了までの期間は短かったが, 基部の雌ずいの生長速度が5品種中最も速く, 花床頂部と基部の雌ずいの子房幅の差が比較的大きかった.
4.'麗紅', 'とよのか', '女峰'の3品種では, 花床頂部の雌ずいは基部の雌ずいより生長が速く, 開花時の雌ずいの子房幅の差は小さかった.

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