園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
テッポウユリにおける雌ずいの老化に伴う自家不和合性の弱まりと花柱溝粘液の蓄積
市村 一雄山本 幸男
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 61 巻 1 号 p. 159-165

詳細
抄録
テッポウユリの自家不和合性は雌ずいの老化に伴い弱まることが知られている. また花粉管は花柱溝粘液中を生長するので, 花柱溝粘液は自家不和合性の発現と関係していると考えられている. そこで老化に伴い自家不和合性が弱まることと花柱溝粘液との関係について検討した.
雌ずいの老化に伴い花柱溝粘液中の炭水化物量は増加した. これは老化雌ずいでは花柱溝粘液が蓄積することを示唆している. 平均分子量が50,000である花柱溝粘液中のアラビノガラクタンの分子量分布および組成に, 令に伴う変動はみられなかった. 自家不和合性が強い若い花令の雌ずいから採取した花柱溝粘液と,自家不和合性が弱まった老化雌ずいから採取した花柱溝粘液とを, それぞれ花柱溝に注入すると, どちらも自家花粉管生長を著しく促進した. 両者の間で促進の程度に差はみられなかった. 自家不和合性が弱まった老化雌ずいから花柱溝粘液を水で洗浄することにより取り除くと, 自家花粉管生長は有意に抑制された.
以上の結果, 雌ずいの老化に伴い自家不和合性が弱まる主因は花柱溝粘液の蓄積であると考えられた.
著者関連情報
© 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top