園芸学会雑誌
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南方型ハクサイ'捲心'とキャベツ'葉深'の体細胞雑種の作出ならびにそれらの開花特性
山岸 博Mohammad Mofazzal Hossain米澤 勝衛
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1992 年 61 巻 2 号 p. 311-316

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抄録
ポリエチレングリコールを用いた細胞融合により,南方型ハクサイ'捲心'とキャベツ'葉深'の間で体細胞雑種を作出した. その際, 融合処理後の培養における培地中の植物生長調節物質の種類と濃度が, 再分化個体中の雑種形成の頻度に与える影響を調べた. また, 得られた体細胞雑種の開花日を調査するとともに, 花弁の長さと幅を調査した.
再分化した61個体のうち31個体が形態的な観察により体細胞雑種と判定され, 他の30個体は雑種化していないものと判定された. このうち29個体はキャベツ型,1個体はハクサイ型の形態を示した. 体細胞雑種はボスフォグルコムターゼのアイソザイムパターンでも雑種性を示した. プロトプロスト培養用の初期培地のうち, 2,4-Dを1mg•liter-1とした培地に由来する再分化個体では29個体中20個体が体細胞雑種であったのに対して, 2.5mg•liter-1とした培地では32個体中20個体がキャベツ型であり, 初期培地の2,4-D濃度の違いにより体細胞雑種の頻度が異なることが示唆された. 一方, カルス化培地および再分化培地中の生長調節物質は雑種形成の頻度に影響を与えなかったが, 再分化培地上でのシュートの発達に影響を与え, キャベツ型個体は雑種に比較してシュートの発達の早いことが認められた.
ハクサイ型の1個体および体細胞雑種の大半の個体は鉢上げ後60日以内と早期に開花したが, 60~120日を要する個体も雑種中に約1/3存在した. 一方, キャベツ型個体の多くは開花までに100日以上を要し, 約1/3の個体はまったく抽苔しなかった. 体細胞雑種は全般に,ハクサイ, キャベツに比較して花弁が大型化していた.
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