園芸学会雑誌
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カキ'西村早生'の根端細胞分裂と地温との関係
福井 博一梅田 哉望月 啓司中村 三夫
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1994 年 63 巻 2 号 p. 291-297

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抄録

カキの根端の細胞分裂と地温との関係を明らかにするために, ハウス栽培と露地栽培の細根における細胞分裂の季節的変化を比較した.
ハウス栽培における加温は, 1991年3月19日から6月2日までとし, 昼夜とも19°C以上の温度を確保した. 供試樹として両栽培とも23年生'西村早生'の成木20本を使用した. 主幹から1mの位置を40cmの深さに掘り上げて細根を採取し, 根端の約1cmを40本切り取り, 検鏡して細胞分裂像を計数した.
1. ハウス栽培, 露地栽培ともに3月22日にはすでに細胞分裂が観察された. ハウス栽培での細胞分裂指数は6月2日に最高値となり, その後7月18日まで一定で推移したが, 8月以降徐々に低下し, 10月2日には0となった. 露地栽培では, 8月2日まで漸次増加し, その後急滅して9月17日には0となった.
2. 3月から7月までの細胞分裂指数と地温との間には有意な相関関係が認められ, 地温が高まるに従って細胞分裂が促された. 細胞分裂指数と地温との関係から細胞分裂開始期の地温は11.7°Cであると推定できた.
3. 8月から10月までの細根の細胞分裂指数と地温との関係から, 根端の細胞分裂が観察されなくなる時期は9月中旬で, その地温は21°Cと高かった.
4. ハウス栽培, 露地栽培ともに黒色根と白色根が観察された. ハウス栽培では白色根が5月2日から8月まで, 露地栽培では6月2日から8月まで, ともに40%前後観察できた. しかし, 9月以降は白色根はまったく観察できなかった.
5. 黒色根の細胞分裂指数は0.1%前後であったのに対し, 白色根の細胞分裂指数は0.4%前後と高かった.
6. ハウス栽培, 露地栽培ともに, 地温が19°Cを越えると白色根の割合が高まった.
7. 白色根が現れる時期と新梢の伸長停止期あるいは開花期との間に関連がみられた.

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