抄録
新加工用イチゴ品種'ベニヒバリ'は, 'アメリカ'に'宝交早生'を交配して得られた交雑実生から1989年に選抜されたものである.
'ベニヒバリ'の草姿は開張性で, 草丈と葉数は'アメリカ'と同程度である. 収穫時期は5月中旬から6月上旬で, 'アメリカ'よりもかなり早い.
'ベニヒバリ'の果実は円錐形で, 鮮赤色であり, 光沢がある. 果肉は鮮紅色で, 'アメリカ'より硬い. 糖度と酸度は'アメリカ'と同程度である. 株当たりの果実収量は579gで, 'アメリカ'に比べてわずかに低い.
'ベニヒバリ'の成熟果を片手で引っ張ると, へたは果柄に残り, へた無し果実が容易に収穫される. このへた無し果率は'アメリカ'に比べて相当高い. へた跡部位は健全で, 果実は'アメリカ'のように急速に軟化することはない.
'ベニヒバリ'の果実は畑で腐敗しにくく, 腐敗果率は10%以下で, 'アメリカ', '宝交早生'に比べてかなり低い.
'ベニヒバリ'の果実から製造したジャムの品質は'アメリカ'および'宝交早生'のジャムに比べて優れている. 色は鮮赤色で, 果実は柔らかく残り, 香り, 食味の官能評価点も高い.
以上から, 'ベニヒバリ'は加工用露地栽培に適すると考えられる.