園芸学会雑誌
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サルスベリの花色素と花色変異
土岐 健次郎勝山 信之
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1995 年 63 巻 4 号 p. 853-861

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抄録

サルスベリの花色育種に関する基礎資料を得る目的で, 紅色~紫色の変異機構の解明を試みた. 結果は以下の通りである.
1. シアニック系67個体の測色で, 紅色系 (b/a,-0.183~+0.165) と紫色系 (同, -0.785~-0.442) に大別された.
2. 生花弁の吸収スペクトル測定では, 紅色系は524~544nm, 紫色系は, 555~570nmにλmaxがあり,紫色系において360nm付近に強い吸収が観察された.また, E360/EVIS.maxとb/aの間には, 高い負の相関(r=-0.897***) がみられた.
3. 含有する主要アントシアニンは, 紅色, 紫色ともDp3G, Pt3GおよびMv3Gであった. これら3色素の量比は, 大きく変異するが, 全体でみるとb/a値との間には相関関係はなかった. ただし, 紅色系に限るとMv3G比 (Dp3G比) とb/aには負の (正の) 相関がみられた.
4. 花弁細胞液のpHの測定値は, 4.2~5.1の範囲で, 変異した. しかし, これと花色には, 有意な相関はなかった.
5. 粗抽出水溶液を酢酸エチルと振って分画し, 水分画に酢酸エチル分画を加えることにより, 吸収極大は長波長側にシフトし, 逆に粗抽出液を酢酸エチルで洗浄することにより, 短波長側に移動した.
6. TLC分析により, エラグ酸誘導体と考えられる物質が, 特に紫色花弁に多量含まれることより, この物質がサルスベリの花の青色化に関係する主要なコピグメントの一つであると推定された.

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